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完全統合型の信号/電源アイソレーターを用いた低放射の実現信号と電源の絶縁をワンチップで(4/4 ページ)

絶縁を行うと、コモンノード電流の大きなリターンループが生じ、絶縁システムで放射が起きる。今回の記事では、完全統合型の信号/電源絶縁ソリュ−ションを使用して放射を小さくする方法について説明する。

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手順5:保護接地への直接接続または容量結合

 大半の絶縁システムのコントローラー側(「コールド」側)は、システム筐体に接続され、さらには保護接地(PE)に接続されます。しっかり接地接続することにより、コントローラー側のグランドは安定点に接続され、システム内でコモンモードノイズから生じる電磁放射が減少します。従って、可能な場合には絶縁システムのコントローラー側は保護接地としっかり接続する必要があります。

 アナログおよびデジタルI/Oモジュール、絶縁型RS-485およびCANなどのインタフェースの絶縁グランドは、高電圧安全コンデンサーを使って保護接地と交流的に接続できます。この容量結合は、バスやI/Oケーブル上の放電(ESD)、サージ、電気的高速過渡(EFT)用の保護接地に対してリターンパスを提供します。また、絶縁グランド上のコモンモードノイズを削減し、その結果、インタフェースおよびI/Oケーブルを通しての放射を削減します。

 図15に、統合された信号/電源アイソレーターを用いた絶縁型RS-485システム例を示します。マイコンのグランドは直接接続され、絶縁グランドは保護接地に容量結合されていて、入力電源ケーブルおよびRS-485バスからの電磁放射を最小限に抑えられます。


図15:絶縁型RS-485アプリケーションにおける保護接地への直接接続および容量結合

手順6:コモンモードチョークの使用

 DC-DCコンバーターを含むシステムに接続された長いケーブルやワイヤは、コンバーターから高い周波数のスイッチング成分を拾って、送信アンテナのように振る舞います。このため、ケーブルが長くなると放射レベルが増加します。これに対する解決策は、できるだけコモンモード電流ループを小さくし、ケーブルを短くすることです。システムで長いケーブルを避けられない場合、グランドと保護接地〜筐体間の接続が良好であれば、コモンモードノイズを減衰させるためにコモンモードチョーク(図16)を使用できます。統合型絶縁電源ソリューションに対して、チョークは共通電流およびリターンパスのループ面積を減少させるために有効であり、間接的に放射を削減します。コモンモードチョークは、入出力電源上に、またはシステムに接続された長いケーブル上に挿入可能です。


図16:入出力電源およびI/Oライン上のコモンモードチョークによって放射を削減

手順7:慎重な測定、ピーク値検出と準尖頭値検出の比較

 放射測定を行う際には、被試験装置(EUT)、被試験デバイス(DUT)からの放射だけを測定し、装置の他の部分からの放射を測定しないようにする必要があります。以下に紹介する対策を実施しても放射は減少しませんが、被試験システムの真の性能を測定するためには不可欠です。

 放射の主な理由は、基板上にアンテナが形成されることです。システムに給電する長いケーブルやパラメーター測定用のプローブはアンテナのように振る舞い、放射測定値が大きくなる原因になりえます。解決策は簡単であり、システムが最終的に動作する状態を忠実に再現して放射測定を行うことです。被試験システム以外の付属装置全てをファラデーシールド(銅やアルミのような導体金属を裏張りした容器)を使って適切にシールドします。システムに接続されるケーブルはできるだけ短くし、ケーブルの接続先となるモジュールはファラデーシールド内に収納します。

 図17に示すように、ICを含む基板は放射測定のため露出されます。装置の他の部分(図17の場合は12Vバッテリーと低ドロップアウト(LDO)レギュレーター)は、黒い箱に収納され、内部にある部品を測定からシールドするため、アルミホイルで裏張りされています。LDOを基板に接続するケーブルはできるだけ短くし、よくよったツイストペアで構成されています。このケーブルは、箱上部の小さな穴から引き出されています。この穴はファラデーシールドの効果を損なわないよう、できるだけ小さくします。


図17:放射の設定(CISPR 22)

 電源が長いワイヤを経由する場合には、放射が不必要に大きくならないよう、DUT近くにコモンモードチョークを入れることを推奨します。DUT近くにコモンモードチョークを取り付ければ、実際の装置からの放射が測定され、長いケーブルによる影響はなくなります。

 試験途中で追加部品を加えるなど、基板を修正する必要がある場合、部品は長いワイヤで接続するのではなく、必ず基板上に直接はんだ付けします。

 CISPR 22規格によれば、放射仕様は準尖頭(せんとう)値の限度値として規定されていますが、早く結果を得るために通常はピーク検出測定が使用されます。

 デバイス、システムが、全電力を単一ピークに集中させる代わりにスイッチング周波数を狭い帯域内で変化させられるクロックディザリングのような手法を使用している場合には、準尖頭値スキャンを行うと、測定される放射が明らかに減少します。このような手法はピーク値のスキャンレベルを低下させ、準尖頭値スキャンに適用するとはるかに優れた結果を示します。軽負荷時の動作では、DC-DCコンバーターのオン時間が最大負荷状況に比べて随分と短くなるため、放射電力が減少します。予想される通り、この電力の低下は準尖頭値の大幅な改善として現れます。

 最初にピーク検出測定を行ってワーストケース測定用の周波数を求め、それらの周波数で準尖頭値測定を行い、CISPR 22Bの準尖頭値の限度値ラインからの真のマージンを推定すると良いでしょう。

 表1は、準尖頭値(QP)測定により、ピーク検出測定と比較してCISPR 22Bに対する追加マージンが得られることを示しています。


表1: 準尖頭値の結果

まとめ

 統合型の信号/電源アイソレーターは、システム設計を簡素化し、基板面積を縮小します。このようなデバイスで低インダクタンスのチップスケールトランスを使用する場合、高い周波数でのスイッチングが必要であるため、ディスクリートトランスを使ったソリューションと比較すると放射が大きくなります。低い電源電圧での動作、層間スティッチング容量の使用、フィルター、コモンモードチョークなどの手法により、システムレベルの放射を減少させることが可能です。放射測定中は、被試験システムだけを露出し、他の入力ケーブルやプローブケーブルは完全にシールドするよう注意しましょう。

【著者:Abdullah Raouf/Texas Instruments India アプリケーション・エンジニア、Koteshwar Rao/Texas Instruments リード・アプリケーション・エンジニア、Anant S Kamath/Texas Instruments システム・エンジニアリング・マネージャ】

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