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接続形態(トポロジ)と特性インピーダンス高速シリアル伝送技術講座(4)(2/5 ページ)

今回は接続形態(トポロジ)、特性インピーダンスについてです。LVDS系テクノロジーのさまざまなトポロジとその基本な構成、またPECLやCMLを使用して同機能を高速で実現する方法などについて紹介します。

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特性インピーダンス(characteristic impedance)

終端抵抗のない伝送路の信号反射とリンギング

 一般のシングルエンド配線では図7右図のように入力部分に終端抵抗はなく、信号に含まれる波長に対してある長さ以上の伝送路では、入力部で信号が反射し、出力端へ戻っていく反射の繰り返しでリンギングと呼ばれる現象が起こります。皆さんもオシロスコープの測定で見慣れた波形ではないでしょうか?


図7:終端なしシングルエンド信号の反射(リンギング)

 この信号反射がどのようにして起こるのか、図8を使用し説明していきます。

 ①:出力信号がLow→Highに遷移し、伝送路を通り終端抵抗のないハイインピーダンス入力端に到達
 ②:プラス側に反射した信号が伝送路を通って出力側へ戻る(オーバーシュート)
 ③:出力端に反射した信号が到達
 ④:低インピーダンス出力端に信号がぶつかりマイナス側への反射(アンダーシュート)し①に戻る


図8:伝送路を往復する反射で発生するリンギング

 これを何度も繰り返した挙動が「リンギング」と呼ばれる図7左の波形の信号変化時に現れるばたつきの原因です。

 このリンギングは出力端から信号が伝送路を通って入力端に到達し、その信号が反射することの繰り返しで発生しているため、リンギングの周期はその伝送路の伝送遅延に依存していることが分かります(リンギングの大きさはダイオードなどでクリッピングしていなければ、伝送路インピーダンスZ0、終端部インピーダンスZとして電圧反射係数ρ=(Z−Z0)/(Z+Z0)の比率で求められます)。

 同軸ケーブルやストリップラインのようなシンプルな構造体では、信号の伝送遅延は、単一媒体の誘電体に囲まれた構造の伝送路の比誘電率εrと比透磁率μrに依存し、その伝送速度は光の速さの1/√(εrμr) になります。ここで比透磁率をμr=1とすると、単純に1/√εr)となり、例えば比誘電率4の材質で挟まれた、基板の内層配線(ストリップライン構造)の伝送路では1/√4=1/2で、信号の伝送速度は光の50%になります。


図9:同軸および、ストリッププライン構造と伝送遅延

 また図9左の同軸ケーブルなどで使用される誘電体ポリエチレンの比誘電率は2.3程度で1/√2.3≒0.66となり、光の速さの66%の伝達速度となります。空気が誘電体の無線通信では、空気の比誘電率は1.00059のため、光とほぼ同じスピードです。

 光の速さは約3.0×108m/秒で、上記計算から基板のストリップライン構造(図9右)の配線は光速の2分の1のスピードで、15cm/ナノ秒となり、1cm進むのに67ピコ秒かかります。

 また、片面が空気に面するマイクロストリップ配線の構造(図10)では同じ比誘電率4の基板でも、ストリップラインと比較し10〜15%遅延は少なくなり、57ピコ秒/cm程度になります。(図10近似式参照)


図10:マイクロストリップライン構造と近似式

 例えば基板上の終端のないマイクロストリップライン5cmの出力端(ローインピーダンス)、入力端(ハイインピーダンス)のリンギングは伝送路を行って戻ってくる往復の計10cmの時間周期、おおよそ67ピコ秒×(0.85〜0.9)×10cm=570〜603ピコ秒で1周期サイクルのリンギングとなります。

 信号がHigh→Lowに遷移した場合も同じ挙動となり、Low側信号のリンギングも発生します。

 終端抵抗を使用しないシングルエンド信号での設計では、次のサイクルまでにこのリンギングが最低限収束するように設計しなければなりません。そのため、この終端部のインピーダンスミスマッチは高速化を阻害する要因になっています。

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