サーミスタ(1) ―― NTCサーミスタとPTCサーミスタ:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(11)(3/4 ページ)
今回から「サーミスタ」を取り上げます。サーミスタの分類について簡単に説明するとともに、サーミスタを使用した回路動作の概要について解説していきます。第1回は、NTCサーミスタとPTCサーミスタの違いとともに、NTCサーミスタによる突入電流制限回路について考察します。
NTCサーミスタを用いた突入電流制限回路
このような問題の対策の1つに、負の温度特性を持つサーミスタ(NTC)を図1のようにACラインに直列に挿入する方法があります。このNTCサーミスタは図2に示すように、常温時には抵抗が大きくなり、高温時には抵抗が小さくなる負の温度特性を持っています。
(25℃→10Ω 100℃→1Ω)
したがってサーミスタが冷えている電源投入時は抵抗が大きいので突入電流を抑制でき、時間が経過して通過電流による自己発熱が進むと温度上昇に従ってサーミスタの抵抗値が低下し、自己損失を減少させます。また、同時に抵抗値減少によって整流効率も向上します。
このようなメカニズムのためにAC電源のON/OFFを頻繁に繰り返す用途には向きませんが、多くの家電機器や事務機器などはAC電源が投入された後は通電状態のまま待機モードなどで状態を維持します。
したがって頻繁にAC電源の完全断続が行われるわけではありませんのでこのようなNTCサーミスタによる突入電流制限回路が数多く用いられています。
図3にこのような突入電流制限用のNTCサーミスタの外観と内部構造例を示します。
形状は突入時の電力に対応するために大型化が可能なディスク型の形状になっています。
図3:突入電流制限用NTCサーミスタの外観と内部構造
出典:左写真=http://www.szlinxiang.com/en/gonglv/6-jpg
中央写真=http://img.diytrade.com/cdimg/1012037/10574328/0/1253702012/NTC_thermistor.jpg
構造的にはディスク型の素体にエポキシディップ塗装がされていますが、この塗装は安全規格上、絶縁とはみなされない場合があるので部品倒れには注意が必要です。部品が倒れた後も外力を取り除いた状態での空間、沿面距離が必要になります。
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