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なぜこんな仕様に? 不便な保護回路付きリチウム電池ホルダーを改造Wired, Weird(3/4 ページ)

今回は、少し取り扱いに注意がいる「18650リチウムイオン二次電池」にうってつけと思い購入した保護回路付き電池ホルダーを取り上げる。便利な電池ホルダーだと思って手に入れたものの、不便極まりない仕様になっていた――。そこで、不便さを解消すべく、保護回路をじっくり観察し、改造を施すことにした。

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「G2JL」とそっくりな保護ICを発見!!

 保護ICの機能やピン番号も判明したので、これと同等のリチウム電池の保護ICを数社のデータシートから調べた。その結果、あるICメーカーの保護ICのピン番号がぴったり一致し、データシートの参考回路図の定数も図5と全く同じだった。このICの参考回路図をベースに、ピン番号などの要素を加えた回路図を図6に示す。


図6:あるICメーカーの保護ICの参考回路図をベースに作成した回路図

 図6の応用回路例でICのピン番号も定数も図5と全く同じだ。実装されていたG2JLはこのICの相当品に間違いない。また他社のリチウム電池の保護回路を調べてみたが、回路の構成は全く同じだった。

不便さの理由を考察する

 類似ICのデータシートが見つかったのでICの機能も理解できた。さて、なぜ電池を抜いて充電した電池を挿入すると、電圧が出力されないという不便な仕様となってしまっているのかを考察していこう。

 この保護ICはリチウム電池で過放電や過電流が発生した時に、電池のGND側と出力を直列接続した2つのFETで切断するように接続されていた。電池から470Ωの抵抗R1で0.1μFのコンデンサーC1を充電してICの電源が供給されていた。コンデンサーC1でリチウム電池の電圧を監視し、VM端子でリチウム電池の電流を監視している。確認の結果、次のような動作で保護回路が働きっぱなしになることが分かった。

 電池を抜くとC1の電圧が下がるので電池の過放電として認識され、FETがオフになる。電池と負荷をつなぐFETがオフしたためにC1に残った電荷は保護ICのみで消費される。しかし、保護ICの消費電流はかなり少なくC1の放電には相当な時間がかかる。コンデンサーC1に電荷が残ったままの状態で、充電された電池をホルダーに入れても保護ICの出力はオフのままで、負荷側(EB+とEB−)には電圧が出力されないことになる。不便な仕様となっていた原因は、コンデンサーC1の残留電圧で保護ICが過放電を記憶したままになるためだった。

 思い返せば、ホルダーを購入して最初に充電された電池をホルダーへ入れたときには不具合は出なかった。おそらくホルダーは長期間、倉庫に保管されていたのだろう。その間にコンデンサーC1が放電し、電圧は残っていなかったから、充電した電池を入れても動作したのだろう。つまりコンデンサーC1さえ放電させれば、保護ICをリセットできるはずだ。電池交換時にC1の電荷を放電させることができれば、便利なホルダーに生まれ変わるはずだ。

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