検索
特集

フライバックコンバーター設計の検討事項電源設計(1/2 ページ)

フライバックコンバーターは、絶縁型パワーコンバーターで最もコストを抑えることのできる選択肢なのだが、設計が複雑そうに見え、敬遠されがちだ。本稿では、DC53V入力から12V、5Aを出力する連続導通モード(CCM)フライバックコンバーター回路を例に挙げながら設計上の重要な検討事項について考察し、フライバックコンバーターを用いるための一助としたい。

Share
Tweet
LINE
Hatena

最も低コストな絶縁型パワーコンバーターだが……

 フライバックコンバーターには、絶縁型パワーコンバーターとして最も低コストである、複数出力電圧への対応が容易である、シンプルな一次側コントローラーである、最大300Wまでの給電が行える、などの利点が多くあります。フライバックコンバーターは、TVから携帯電話機用充電器、電気通信、産業用アプリケーションまで、多くのオフラインアプリケーションに使われています。その一方で、フライバックコンバーターは、設計の選択肢も多岐にわたり、設計経験のない人にとっては基本動作が手ごわそうに見えます。DC53V入力から12V、5Aを出力する連続導通モード(CCM)フライバックについて、重要な設計上の検討事項をいくつか見ていきましょう。

 図1は、250kHzで動作する60Wフライバック方式の詳細な回路図です。FET Q2がオンになると、トランスの一次巻線両端に入力電圧が印加されます。すると巻線電流が増加し、トランス内にエネルギーを蓄積する動作になります。出力整流ダイオードD1は逆バイアスされているので、出力への電流の流れは妨げられています。Q2がオフになると、一次電流は遮断され、巻線の電圧極性を反転させます。今度は二次巻線から電流が流れ出し、巻線電圧の極性が反転し、黒丸がプラス電圧になります。D1は導通し、出力負荷へ電流を供給し、出力コンデンサーを再び充電します。


図1:60W CCMフライバックコンバーターの回路図 (クリックで拡大)

 トランスの巻線を追加したり、他の巻線上に積み重ねたりすることで、出力を追加することもできます。一方、出力数が増えるとレギュレーションは悪化します。これは巻線とコアの間の磁束結合数(カップリング)が不完全であることおよび、巻線が物理的に離れていることが原因で、漏れインダクタンスが発生するからです。

 漏れインダクタンスは、一次側および、出力側の巻線と直列な浮遊インダクタンスとして振る舞います。この結果、巻線と直列に意図しない電圧降下が発生し、出力電圧のレギュレーション精度が実質的に劣化します。一般的な経験則では、適切に巻かれたトランスを使用した場合、出力はクロスローディング上で±5〜10%の電圧変動が予想されます。さらに、負荷が重い場合、漏れインダクタンスによって誘起された電圧スパイクのピークにより、無負荷の二次側出力の電圧が大きく増加することがあります。この場合、プリロードまたはソフトクランプを使用すると、電圧を制限する上で有効です。

CCMとDCM、それぞれの利点と欠点

 CCMとDCM(非連続導通モード)動作にはそれぞれ利点があります。定義によると、出力整流ダイオードの電流が次のサイクル開始前にゼロまで減少した時に、DCM動作となります。DCM動作は、一次側のインダクタンスが小さくなるため、一般にパワートランスを小型化できる他、整流ダイオードの逆回復損失とFETのオン損失がない、右半平面にゼロがない、などのメリットがあります。その反面、CCMと比べて、一次側と二次側でピーク電流が大きい、入出力コンデンサーの容量が増加する、EMI(電磁波妨害)が増加する、軽負荷時のデューティーサイクルが減少する、などのデメリットもあります。


図2:CCM/DCMのフライバックFET電流と整流ダイオード電流の比較 (クリックで拡大)

 図2は、最小VIN(入力電圧)で負荷が最大値から約25%まで低下した場合、CCMとDCMでQ2とD1の電流がどう変化するかを示しています。CCMでは、固定入力電圧で、負荷が最大と、最小の設計レベル(約25%)の間である時、デューティーサイクルは変化しません。負荷の減少とともに電流の「ペデスタル」レベルは低下し、やがてDCMに遷移します。DCMになるとデューティーサイクルが減少します。DCMでは、VINが最小、負荷が最大時にデューティーサイクルが最大になります。入力電圧が増加するか負荷が軽くなれば、デューティーサイクルは減少します。

 これにより、高電圧ラインおよび、最小負荷では、デューティーサイクルが小さくなります。使用しているコントローラーがこの最小オンタイムで正しく動作することを確かめてください。DCM動作では、整流ダイオードの電流がゼロになった後、50%未満のデューティーサイクルに対してデッドタイムが挿入されます。これはFETドレイン上の正弦波電圧によって特徴付けられ、残留電流、寄生容量、漏れインダクタンスに依存しますが、通常は問題ありません。この設計では、スイッチング損失とトランス損失の減少により高効率になるので、CCM動作を選択しました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る