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フライバックコンバーター設計の検討事項電源設計(2/2 ページ)

フライバックコンバーターは、絶縁型パワーコンバーターで最もコストを抑えることのできる選択肢なのだが、設計が複雑そうに見え、敬遠されがちだ。本稿では、DC53V入力から12V、5Aを出力する連続導通モード(CCM)フライバックコンバーター回路を例に挙げながら設計上の重要な検討事項について考察し、フライバックコンバーターを用いるための一助としたい。

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その他の検討事項

 この設計では、12V出力の安定化後、一次側を基準とする14Vのバイアス巻線を使用してコントローラーへの給電を行うことで、入力から直接給電する場合よりも損失を削減しています。リップル電圧低減のために、2段構成の出力フィルターを選びました。初段のセラミックコンデンサーはD1の脈流からの大きなRMS電流を扱います。これらのリップル電圧はフィルターL1および、C9、C10によって減衰し、C9、C10で減少したRMS電流とともに、リップルが約10倍削減されます。リップル電圧が大きくてもよい場合、出力LCフィルターを取り除くことは可能ですが、出力コンデンサーは最大RMS電流に対応可能でなければなりません。

 図1の回路図で使用しているコントローラー(UCC3809-2)は、絶縁アプリケーション用に光カプラU2と直接インターフェイスするよう設計されています。非絶縁の設計では、エラーアンプを内蔵したコントローラーなどと同様、U2とU3はコントローラーに直結する電圧帰還の分圧抵抗回路とともに、取り除くことができます。

 Q2とD1上のスイッチング電圧は、トランスの巻線間容量と部品の寄生容量によって、高周波数のコモンモード電流を発生させます。EMIコンデンサーC12によってリターンパスを提供しないと、この電流は入力または出力またはその両方に流れ込み、ノイズの増加や誤動作の原因となります。

 Q3、R19、C18、R17の組み合わせにより、オシレーターの電圧ランプがR18の一次側電流センス電圧に加算され、電流モード制御で使用されるスロープ補償が行われます。このスロープ補償は、分数周波振動(=広いデューティーサイクル・パルスの後に狭いデューティーサイクル・パルスが続く現象)を取り除きます。このコンバーターは50%動作を超えないよう設計されているので、スイッチジッタによる影響を低減するためにスロープ補償を追加しました。ただし、電圧スロープ補償を過度に行うと、制御ループが電圧モード制御に遷移し不安定になる可能性があります。最後に、出力電圧の制御性を維持するため、フォトカプラによって二次側からエラー信号を伝達します。フィードバック(FB)信号は、電流ランプ、スロープ補償、出力エラー信号および、過電流のスレッショルドを低下させるDCオフセットから構成されます。

 図3にQ2とD1の電圧波形を示します。漏れインダクタンスとダイオードの逆回復によって誘起されたリンギングが示されています。


図3:FETと整流ダイオードのリンギングをクランプおよびスナバで制限(57VIN、12V@5A) (クリックで拡大)

 低コストの絶縁型コンバーターが必要なアプリケーションでは、フライバックは定番だと考えられています。

著者プロフィール

John Betten(ジョン・ベッテン)氏/Texas Instruments

 Texas Instruments(TI)技術スタッフ アプリケーション・エンジニアおよび、TIグループ・テクニカル・スタッフのシニア・メンバー。AC-DCおよび、DC-DC電力変換設計において28年以上の経験を有する。ピッツバーグ大学 電気工学 理学士取得。IEEE(米国電気電子学会)メンバー。


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