制御用PCの修理(後編) 熱破損を起こした3つの原因:Wired, Weird(3/3 ページ)
前回に引き続き、半導体製造装置に使用されている制御用PCの修理の模様について報告する。CPU横に頭が膨れた電解コンデンサーがあり、どうも放熱設計がうまくなかったようだ。故障原因を考察していこう。
熱破損を引き起こした3つの原因
さて、CPU基板が短絡破損した原因を推定してみよう。破損の原因は熱破損と思われるが、これを引き起こす不具合要因は3つ考えられた。1つ目はカードラックの熱設計ミスだ。そのミスとは、発熱量が大きいCPU基板の搭載位置が悪く、放熱を配慮していないということだ。前回にも紹介したカードラックの写真を図6に再掲するが、CPU基板を赤四角で囲った。
CPUにはファンが付いているが、ファンとケースの距離が短く、風が通りにくい。またケースに風抜き穴もない。CPU基板の上方側にメモリー基板が実装されていて、これが壁となってしまいCPU基板上の高熱になった空気がCPU基板の外と内で入れ代わりにくい構造になっていた。
2つ目はAT1電源の採用だ。この電源は外部からは電源のオン、オフができない。このためCPU基板が高熱になってもPCの電源を切る以外の方法がない。恐らくシステムのモニターにはCPUが高熱になったアラームが表示されたと思われる。だが、アラームが出ても自動的に電源を切ることができないためCPU基板が過熱した状態が長時間にわたって続いてしまったと推測された。
3つ目はファンの選択ミスだ。使用されていたファンを確認したら、回転がロックされると自動的に電源を切り回転が止まった。再通電するとファンは回転を始めた。CPU基板が高温になったときに何らかの原因でファンがロックして回転が止まったことも推定される。このため、CPUが高熱になって周辺の基板や部品が高熱になった。そしてCPUに近くにある電解コンデンサーやハンダ面のタンタル電解コンデンサーが高温になり、部品面に実装されたCPU隣の電解コンデンサーが短絡破損しCPU基板が過電流になって電源が切れたと思われる。
次の修理に備えて、もう1枚の代替品を手配……
故障状況から、このPCの故障原因は基板の放熱設計ミスだろう。またCPU基板のコネクターが接着されていたが、これはコネクターの数が8個と多く、ファンの振動も大きいので接触不良が起こりやすく、コネクターを接着剤で固定せざるを得なかったと思われた。
このPCが実装された製造装置は今まで20年程度稼働しているが、今後も継続して稼働するだろう。修理の再依頼が来る可能性か高いので、基板が入手できるうちにCPU基板をもう1枚手配しておいた。
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