マイコンの発熱 ―― 検討事項と熱計算方法:Q&Aで学ぶマイコン講座(40)(2/4 ページ)
マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。40回目は、中級者の方からよく質問される「マイコンの発熱」についてです。
熱計算の考え方
マイコンが動作していない時は、消費電力はゼロなので発熱しません。したがって、この時のPN接合部温度は、マイコンが置かれている周囲温度と同じになります。マイコンが動作すると、電力を消費するので発熱します。マイコンの消費電力による発熱によってPN接合部温度は、周囲温度よりも上昇します。この時にPN接合部温度の温度上昇を計算する際に熱抵抗という概念を使います。熱抵抗は温度の伝わり方を数値化したもので、単位時間当たり発熱量当たりの温度上昇量を意味します。単位は℃/W です。熱抵抗はマイコンのパッケージの形状によって、それぞれ異なります。図2に32ビットマイコン「STM32L152」(STマイクロエレクトロニクス製)のデータシートに記載されているパッケージごとの熱抵抗を示します。パッケージに応じた熱抵抗を使って熱計算します。
消費電力は、実測するのが最も正確ですが、データシートの消費電力スペックから計算したり、消費電力計算ツールを使ったりしてもよいでしょう。データシートや消費電力計算ツールで算出される値は電流値(A)なので、それに電源電圧をかけて消費電力(W)を算出します*1)。
消費電力によるPN接合部温度上昇は、「温度=熱抵抗×発熱量」ですので、これに周囲温度を加えれば、PN接合部温度が求まります。この式が「オームの法則」に似ているため、「熱解析のオームの法則」と呼ばれる場合もあります。
*1)参考記事:Q&Aで学ぶマイコン講座(23):消費電力の計算方法
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