低抵抗測定で熱電対による雑音を取り除く:Design Ideas 計測とテスト(1/2 ページ)
小さな電圧または低いインピーダンスを測ろうとするとき、熱による起電力は読み取り誤差となることが多い。そこで、本稿では測定結果から熱器電力による誤差を排除する計測手法を紹介する。
電流方向を逆にして2回計測する
ループを構成するように2本の異なる金属導体を接続し、接合部の一方を他方より高温にすると、ループに電流が流れる。電流の大きさは、2本の金属の種類と接合部の温度差に依存する。
ループを開くと、熱起電力による電圧が開放端に現れる。この現象もまた、2つの金属の種類と接合部の温度差に依存する。2つの金属の接合は熱電対を形成する。熱起電力による電圧は熱電対の電圧となる。
小さな電圧または低いインピーダンスを測ろうとするとき、熱によるこの起電力は読み取り誤差となることが多い。デジタルマルチメーターは通常、1回測定した後に電流方向を逆にして再度測定することによってこの問題に対処している。低抵抗の素子あるいは熱電対の接合に流す電流の向きを逆にすると、信号の極性は逆になるものの、熱起電力の向きは変わらない。従って2つの測定値を平均化すれば、最終結果から熱起電力の影響を取り除くことができる。
図1の回路で、IC1は低い抵抗値の抵抗器RLOWの抵抗測定を実行するA-D変換器である。図1には熱による起電力(EMF1およびEMF2)を示した。A-D変換器から抵抗器、抵抗器からA-D変換器へという経路で熱による起電力の和が加わる。RLOWの測定を1回で済ませようとすると、通常はこれらの起電力が誤差となる。
ただしこの回路は、IC1が内蔵した2個の電流源IEXC1とIEXC2の出力が、パッケージピンIOUT1とIOUT2のどちらか一方に現れるようにプログラムできる。すなわち、抵抗器を流れる電流の向きを逆にできる。このため、熱による起電力(EMF1およびEMF2)の影響を2回の測定で取り除くことができる。
励起電流を増やして測定感度を上げるために、200μAの内部電流源2個を1個のピンに並列接続した。従って励起電流IEXCは400μAとなる。
トランジスタQ1およびQ2は励起電流を基準抵抗RREFに導く。この結果、励起電流の向きに関係なく、RREFの両端には常に同じ極性の基準電圧が現れる。図には示していないがこれらのトランジスタは、IC1のポートピンP1およびP2によって逆位相モードで駆動される。RREFの値は6.8kΩがよい。2.5Vという一般的な相対比較用基準電圧値を保証する。
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