抵抗器(4) ―― 固定抵抗器の信頼性設計:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(18)(3/3 ページ)
抵抗器の使い方、特にディレーティングと故障率の関係について説明をしていきます。
抵抗器の市場不良
固定抵抗器の市場不良については各抵抗器メーカーやJEITAから種々の資料が発行されています。
- JEITA RCR-2121B
- 電子機器用固定抵抗器の使用上の注意事項ガイドライン「4.4 信頼性向上のための配慮」
- Panasonic AIS社 表面実装固定抵抗器 テクニカルガイド Ver3
- 図12 角形チップ固定抵抗器,多連チップ固定抵抗器,チップ抵抗ネットワークの故障メカニズム
- 図13 薄膜チップ固定抵抗器の故障メカニズム
これらの資料の故障モード分析図から、パターン設計、はんだ付け技術、使用環境、封止の有無、使われ方、など種々雑多の原因が市場不良を誘発していることが読み取れ、「ここだけ注意すれば良い」といった単純なものではないことが分かります。
抵抗器の仕様書記載事項
カタログは宣伝広告資料なので順次改定が行われ、部品を認定した時の条件がいつの間にか抹消され、必要な特性が後日の設計に反映できない時があります。
このようなことのないように部品認定時には多少面倒でも設計に有益な情報を記載した納入仕様書を交換しておくことをお勧めします。
特に、特性曲線群、使用材料名、生産ラインの流れと各工程での検査(=管理)手法が分かるQC工程表、などは必須の記載項目といえるでしょう。
注)カタログなどで確認できる電圧係数、断続過負荷寿命、などの事項は当然記載してあるものとします。
抵抗器については今回で終わり、次回は少し趣を変えて機械部品であるFANについて説明をしたいと思います。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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