FAN(1) ―― ファンの種類と特徴、選び方:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(19)(4/4 ページ)
FAN(ファン)は、一般の電気回路設計者にはなじみの薄い部品であり、使い方などの注意事項も徹底されていません。しかし、機器の小型化、電力密度の向上などによって電気回路設計者にも無縁の部品と言えなくなってきていますので簡単にファンの使い方について説明します。
2. P-Q特性
流路抵抗とは風の流れを妨げる物体がない場合に対する実際の流れの様子を示すパラメーターです。
ファンの風量Vは流路抵抗がない場合の計算であって、実際には流路抵抗ありますのでその分を考慮する必要があります。空気を含めて流体は粘性を持ちますが、この粘性によって風下の流体を押しのける反力がファンに返ってくるのです。この流路抵抗と風量の関係を表した特性を図2に示すP-Q曲線図と言い、カタログには必ず記載されているファン特性の必須曲線です。
PMAX:最大静圧 | 測定チャンバーを密封した場合の最大圧力 | (Y軸交点) |
---|---|---|
QMAX:最大風量 | 測定チャンバー内と大気圧との圧力差を0にした時の風量 | (X軸交点) |
表3:ファンの用語 |
図2(c)のプロペラファンをP-Q曲線の平たん部より右側で使うことを考えれば3式による計算値の1.5倍程度の最大風量を採用すればよいでしょう。
(計算で流路抵抗を求めることは困難ですので実験の積み重ねが必要です)
P-Q曲線の形状自体についても注意が必要で、例えば図2(a)に示すACモーター型シロッコファンのP-Q曲線のように右肩上がりになっている場合には回転数不安定現象を起します*3)。
しかし、図2(b)のDCモータータイプのシロッコファンや図2(c)のプロペラファンではそのようなうねりは存在しません。このようなことを確認しながらファンを選定します。
*3)図2(a)の動作点Aより右側では流路抵抗曲線(A)とP-Q特性は直交に近くなりますが、動作点A〜B間は右肩上がりですので流路抵抗曲線(B)とP-Q特性曲線が浅く交わります。このため動作点A〜B間ではファンの動作点が安定しにくくなる現象を言います。
また、同じ風量Vを扱うにしても面積×風速によって大口径ファンをゆっくり回すのか、小口径ファンを高速回転させるのかの考え方があります。
大型ファンには取り付け場所の問題が、また高速ファンは騒音の問題があります。いくら低騒音ファンが開発されたからといって、部品の風切り音には関係がなく、部品レイアウトの問題もついて回ります。最終的にはケース・バイ・ケースですが基本的には大型ファンをゆっくり回します。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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