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DC-DCコンバーターの突入電流と負荷の制限DC-DCコンバーター活用講座(22) DC-DCコンバーターの保護(3)(2/3 ページ)

今回は、DC-DCコンバーターの突入電流と負荷の制限について解説します。

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突入電流の制限

 突入電流に関しては、あまり考慮されていない例が数多く見受けられます。全てのDC-DCコンバーターは、伝導性干渉を減らすための内部フィルター回路を備えています。このフィルターは少なくとも単純な入力コンデンサーを使用したもので、多くの場合はRCまたはLCローパスフィルター、あるいはπフィルターが使われます。最良のフィルターコンデンサーは、等価直列抵抗(ESR)が非常に小さいコンデンサーです。これは、通電時に両入力端子間がほとんど短絡状態になることを意味します。MLCCコンデンサーの中には、ESRが100mΩ未満のものもあります。突入電流IIRは起動時にのみ発生する現象ですが、ピーク電流は通常動作時の入力電流より数桁高い値となることもあります。入力コンデンサーはほとんど完全な短絡状態と同じになるので、電流を制限するものは、リードのインピーダンス(ZL)と電源の内部インピーダンス(ZIS)のみです。


図2:突入電流モデル 出典:RECOM(クリックで拡大)

 入力フィルターコンデンサーによる突入電流に加えて、DC-DCコンバーターも起動しようとします。トランスは通電状態となり、負荷コンデンサーも充電されます。これらのエネルギーが全て重なり合うので、入力電流が安定するまでの間、突入電流のピークやトラフが複数見られることも珍しくありません。2Wコンバーターの例を図3に示します。このコンバーターの公称入力電流は80mAですが、突入電流は8A近くに達しています。このような突入電流は驚くほど高い値のように見えますが、その持続時間は10マイクロ秒程度に過ぎません。


図3:突入電流の例 出典:RECOM

 POLアーキテクチャでは、多くのDC-DCコンバーターが中間バス電源に並列に接続されます。従って数多くの低ESR入力フィルターコンデンサーが並列に存在しており、適切な対策を講じない限り、これらのコンデンサーによって非常に高い突入電流が流れる恐れがあります。

 複雑なシステムでは、コンバーターを順番にスイッチオンして突入電流を制御することができます。あるいは、図4に示すような回路を使用して突入電流を制御することも可能です。


図4:突入電流リミッター(ソフトスタート) 出典:RECOM

 突入電流リミッターは、入力電流が安定した後に電流制限抵抗RLを短絡します。電界効果トランジスタQ1はNチャンネルMOSFETで、これは、R1、R2、C1で構成されるRC回路によって制御されます。パワーオン時はC1が放電されてゲート電圧を低い値に保つので、Q1はオフです。DC-DCコンバーターの入力容量はRLを介してゆっくりと充電されるので、突入電流が減少します。

 一方で、Q1のゲート電圧がVIN×R2/(R1+R2)に達するまで、C1がR1経由で充電されます。この電圧は、FETをオンにして直列抵抗RLを短絡できるだけの十分な値を選びます。C1の値が小さい場合は、ゲート容量CGがタイミングに関して重大な要素となり得ますが、充電時定数τ=(R1||R2)(C1||CG)を使って計算することができます。FETは、ワーストケース時の入力電流(最大出力負荷、最小入力電圧時)を連続して流すことのできるものを選ぶ必要があります。R1とR2のサイズは、ゲート電圧が、最小入力電圧時のVGSに対して指定された最小値より高くなるように決定する必要があります。

 RLの選択はユーザーによりますが、通常は数オームで十分です。数オームあれば、DC-DCコンバーターを正しく起動するために必要な電力を不足させることなく、突入電流を受け入れ得るレベルまで減らすことができます。ETSI標準ETS 300 132-2は、最大許容突入電流を公称入力電力の48倍と定めています。図3に示す例では、6Ωの直列抵抗を使用すれば、コンバーターに関しては十分にETSIの要求を満たすことができます。実際には、このコンバーターの電力は小さいので、通常動作時の抵抗による損失は40mWに過ぎず、図4に示すような突入電流制限回路は不要です。

 一部のアプリケーションでは、NTCを突入電流リミッターとして使用できます。NTCは初期抵抗値が高く、突入電流を制限します。デバイスの温度が上昇するにつれて抵抗値が減少し、DC-DCコンバーターの電流を増大させることができます。NTCの主な欠点は、十分な温度を保って抵抗値を低い状態に維持できるよう、連続的に電力を消費しなければならないことです。

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