DC-DCコンバーターの突入電流と負荷の制限:DC-DCコンバーター活用講座(22) DC-DCコンバーターの保護(3)(3/3 ページ)
今回は、DC-DCコンバーターの突入電流と負荷の制限について解説します。
負荷の制限
突入電流を減らすもう1つの方法は、起動時のコンバーターの負荷を小さくすることです。これは突入電流の負荷依存部分を減らし、入力フィルター容量による部分だけを残します。負荷を減らす方法は基本的に2つあります。出力ソフトスタートと出力負荷スイッチです。
出力ソフトスタートは、主に抵抗性負荷にのみ電力を供給する、出力電圧調整機能付きのコンバーターで使用可能です。出力電流は出力電圧に比例するので、出力電圧の初期値を低く設定すれば出力電流も小さくなり、結果として突入電流も小さくなります。その後に出力電圧をランプアップさせて、動作電圧まで増やすことができます。
R-6112x降圧レギュレーターシリーズを使用したこの方法の例を、図5に示します。コンバーターに通電すると、コンデンサーC1が放電されます。さらにPNPトランジスタが完全にオンになり、VADJピンの電圧がVOUT+に引き上げられます。これによって、出力電圧が最小出力電圧に設定されます。例えば、公称出力が12V、1AのR-6112xコンバーターを使用すると、出力電圧は3.3V、275mA、つまり全負荷時の約4分の1まで降圧されます。C1がR1を介して充電されるとTR1に流れる電流が減少し、出力電圧がランプアップして最終的には完全な公称出力電圧に達します。ダイオードD1は、コンバーターのスイッチをオフにした時にC1が急速に放電されるようにして、次の出力ソフトスタートに備えます。
2番目の突入電流制限方法は、負荷スイッチです。この方法は、任意のコンバーターまたは負荷タイプで使用できます。出力負荷は、出力電圧が安定した時点で接続されます。従って、この場合の突入電流には2つのピークがあります。1つ目がスイッチオンの時で、2つ目が負荷をオンにした時です。この方法は合計突入電流をより長い時間に分散し、最大ピーク電流を減少させます。
出力負荷をスイッチするのは、図6に示す突入電流制限回路の電圧変動です。電界効果トランジスタQ1はNチャンネルMOSFETで、これは、R1、R2、R3、C1で構成されるRC回路によって制御されます。パワーオン時はC1が放電されてゲート電圧を低い値に保つので、Q1はオフです。さらに、Q1のゲート電圧がVRL×R2/(R1+R2)に達するまで、C1がR1経由で充電されます。この電圧は、FETをオンにして負荷を接続できるだけの十分な値が選ばれます。R3は値の大きい抵抗で、コンデンサーC1とともに、負荷を突然スイッチオンにすることで生じる出力電圧低下を排除します。R1とR2のサイズは、ゲート電圧が、公称出力電圧時のVGSに対して指定された最小値より高くなるように決定します。ダイオードD1は、コンバーターのスイッチをオフにした時にC1が急速に放電されるようにして、次のスイッチオンサイクルに備えるためのものです。
低電圧ロックアウト
入力電圧が低すぎる場合は、入力電流がDC-DCコンバーター部品の設計限界を超える恐れがあります。従って、一部のコンバーターには、入力電圧が低くなり過ぎた場合にコンバーターの動作を停止する内部制御回路が組み込まれています。この回路は低電圧ロックアウト(UVL)と呼ばれます。
UVL回路の有効性を過小評価するべきではありません。例えば、12V電源で12Wの出力を必要とするアプリケーションを考えてみます。公称入力電圧では1Aの電源で十分です。従って、1次電源としての仕様値は1.5A程度です。コンバーターの入力電圧範囲は通常9〜18Vなので、起動時には入力電圧がランプアップして9Vを超えた時点で動作を開始し、1.3Aの電流が流れます。しかしUVL回路がないと、コンバーターは仕様範囲外の7Vでも起動しようとします。この場合に流れる電流は1.7Aです。これは、入力電圧が崩壊する1次電源電流制限値より高い値です。コンバーターが最終的に正しく起動するまでの間、電源とコンバーターは数サイクルにわたって互いに連携して動作します。その一方で、負荷にいくつかの制御されていない電圧パルスが現れて、アプリケーションを損傷させる恐れがあります。
従って、UVL機能はDC-DCコンバーターを保護するだけでなく、負荷と1次電源を過電流から保護する役割も果たします。UVL機能が組み込まれたDC-DCコンバーターを使用できない場合は、図7に示す外部回路を使用して、入力電圧が安定するまでコンバーターが動作しないようにすることができます。これには、LM10のようにレファレンス電圧が組み込まれたオペアンプが適しています。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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