IGBTやCMOS ICを使った回路に隠れた“落とし穴”:Wired, Weird(1/5 ページ)
今回は、不具合が生じたIGBTやCMOS ICを使った回路例を紹介する。いずれの回路も、回路設計の“基本中の基本”をおろそかにしてしまったことが不具合の原因だった。
電気製品の基板やデバイスの不具合でいろいろな相談を受ける。不具合解析を行う時は最初に回路図を読み、信号の流れと動作を理解して現品を確認する。しかし、回路図を見た瞬間にこの回路設計は大丈夫なのか? と感じることが多々ある。今回はIGBTやCMOS ICを使った回路での不具合解析の結果から回路設計の落とし穴を説明していこう。
高圧パルスの出力が低く、抵抗が熱くなるIGBTを使った回路
まずはIGBTの不具合解析だ。解析を依頼された不具合内容は『高圧パルスの出力が低くて、予定した電圧が得られない。また電源に接続している抵抗が熱くなる』というものだった。この基板のIGBTは主回路電源にDC1000Vが使用されていた。IGBTのエミッタ−コレクタ間の耐圧は1700Vで十分な電圧マージンがあった。
実装された基板でIGBTの電圧と動作を確認した。電源を投入するとIGBTのゲート電圧は0Vで、コレクタには10kΩの抵抗とトランスを通してDC1000Vの電圧が印加されていた。だが、IGBTのコレクタの電圧は700Vまでしか上がらなかった。DC1000Vの電源を切って10kΩの抵抗R1に触れたら熱くなっていた。正常であればDC1000Vの電源を切るとIGBTはオフし電流は流れなくなるので、抵抗は発熱しないはずだ。どうやらIGBTが劣化してしまい、漏れ電流が流れて抵抗が電力を消費しているようだ。この高圧回路のIGBT周辺の接続回路を図1に示す。
図1の回路を説明する。IGBTのゲート駆動回路に24V電源の高速フォトカプラのPC1が使用され、この出力が100Ω(R2)の抵抗を通してIGBTのゲートに接続されていた。また主回路電源のDC1000Vから抵抗10kΩ(R1)でコンデンサ100nF(C2)が充電され、IGBTはC2に充電された電荷をトランスTR1に通して放電し、TR1の二次側に高電圧パルスを生成するように構成されていた。一見、問題がなさそうな回路接続ではある。だが実は大きな問題が隠れており、IGBTの劣化を招いているのだ。
さて読者は図1の回路図に隠れる問題を見つけられただろうか?
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