マイコンに搭載されたA-Dコンバーターの測定精度を上げる方法【原因と対策】:ハイレベルマイコン講座【ADC測定精度編】(1)(5/5 ページ)
すでにマイコンを使い込んでいるマイコン上級者に向けた技術解説連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から2回にわたって、ノイズの影響を受けず、マイコンに搭載されているA-Dコンバーター本来の測定精度を得る方法を、実際の測定を基に解説する。
コラム:平均化でノイズは減らない!?
以前、あるユーザーから「平均化でノイズが減ることはない」と主張されたことがある。「何回測定しても毎回一定量(例えば5LSB)のノイズが発生するのだから、複数回測定して加算し、測定回数で割っても、結果は変わらない(5LSB×n÷n=5LSB)」という理屈だ。統計学的には難しい理論があると思うが、次のように考えると、理解しやすいのではないだろうか?
ノイズは乱数的に発生するので、1回目に発生したノイズによる誤差は2回目以降には存在しない、2回目に発生したノイズによる誤差は、2回目以外には存在しない(実際の変換誤差がプラスになったり、マイナスになったり、値が変化する)。以後、3回目、4回目と複数回繰り返す。一方、被測定電源の電圧は常に一定電圧が存在する(平均化しても、変化しない)。したがって、ノイズによる誤差を含んだ数値を平均化すると、各回に存在したノイズ誤差は、加算した回数分の1になるが、被測定電圧は本来の値が残る。したがって、平均化でノイズを除去できる。
これはあくまで私見だが、現実に実測値を平均化すると、ノイズの影響は減り、被測定電圧を求めることができる。
筆者プロフィール
菅井 賢(すがい まさる)
(STマイクロエレクトロニクス マイクロコントローラ製品部 アプリケーション・マネージャー)
日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までArm Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。Armマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。
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