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A-Dコンバーターの測定精度を上げる方法【対策の効果を検証する】ハイレベルマイコン講座【ADC測定精度編】(2)(6/6 ページ)

すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。前回に引き続き、マイコンに搭載されているサンプル&ホールド型A-Dコンバーター本来の測定精度を得る方法を、実際の測定を基に解説する。

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A-Dコンバーターの測定精度を上げる方法【まとめ】

 A-Dコンバーターの測定精度を上げる方法をまとめると、次のようになる。

1)使用環境のノイズを減らす

 A-Dコンバーターの最大の敵はノイズである。とにかくノイズを減らすことが最も効率的な対策である。

 実際に、システムのノイズを最小限に抑え、平均化せずに1回の変換で満足する結果を得ているユーザーは多い。平均化を行うと、精度は上がるが、最終的な変換値を得るまでに時間がかかってしまうので、なるべく使用環境のノイズを減らし、平均化を用いない方が良い。

2)マイコン自体が出すノイズを減らす

 マイコンに内蔵されている機能は必要最低限動作に抑えて、その他の機能は全て停止させる。可能であれば、低消費電力モードを用いて、A-DコンバーターとDMA(またはCPU)のみ動作させて変換すると、内部ノイズを最小限に抑えることができる。

3)平均化

 平均化により、変換結果からノイズを除去できることを今回の実測で実証した。平均化の回数や方法(単純平均や移動平均など)は、マイコンが使われる環境に大きく依存するので、ユーザーが実際の使用環境を考慮して決めるべきである。

4)補正

 オフセット誤差やゲイン誤差、さらに非直線性誤差は、補正計算を行うことで、ある程度除去できる。非直線性誤差の補正は理論的な補正ではなく、近似的補正であるので、完全ではないが、使用環境によっては、ある程度の効果が見込まれる。

5)ダミー変換(2度変換する)

 電圧変動の大きい電圧源を測定する場合は、ダミー変換を行うと効果的な場合がある。

6)配線長を短くする

 被測定電圧源とA-Dコンバーターの入力端子の配線は、極力短くすべきである。


筆者プロフィール

菅井 賢(すがい まさる)
(STマイクロエレクトロニクス マイクロコントローラ製品部 アプリケーション・マネージャー)

 日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までArm Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。Armマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。


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