高速GaNトランジスタ、最適な測定方法とは:次世代パワーデバイス(2/3 ページ)
GaNトランジスタの出現がもたらしたスイッチング速度の高速化に伴って、優れた測定技術、それとともに高速波形の重要特性を細部まで把握する技術が不可欠になっている。本稿では、測定機器をどのように活用すれば、ユーザーの要求条件および測定技術に適合し、高性能GaNトランジスタを正確に評価することができるかを考察する。
低速スイッチングGaNトランジスタを測定する場合
文献[1]によれば、測定に利用可能な最大システム帯域幅は、EPC8009ベース設計のリンギング周波数には届かないことが確実となっている。では次に、EPC8009のような高速GaNトランジスタおよび、EPC2045やEPC2022のような比較的低速のスイッチングGaNトランジスタのスイッチノード波形を取得する場合、システム帯域幅の選定がどのような影響を与えるかを見ていきたい。
測定システムは、ローパスフィルターのように機能し、高周波成分を減衰させる。これを図2(左)に示す。図2を見れば、取得波形の立ち上がり時間が著しく異なっていることが分かる。これは、式(3)のシステム帯域幅と立ち上がり時間の関係によるものだ。
図2(電圧軸の左側)に表示される最高立ち上がり時間はおよそ0.4ナノ秒であり、これはシステム帯域幅約1GHzに対応している。同じプローブとオシロスコープを500MHz帯域幅のデジタルフィルターと組み合わせると、立ち上がり時間測定値が0.8ナノ秒になる。
この測定信号立ち上がり時間は、明らかにシステム帯域幅に制限されたものである。立ち上がり時間測定値がシステム立ち上がり時間計算値に等しいことから、入力信号は、測定システム立ち上がり時間より高速になる。そのため、入力信号立ち上がり時間は0.4ナノ秒よりもはるかに小さいはずだ。
EPC8009ベースの設計におけるリンギング周波数(fr1)の測定値は、最大帯域幅1GHzのプローブを使った際、1.176GHzとなっている。図2(左)に示す低帯域幅の場合には、リンギング周波数測定の精度がさらに悪くなっている。
ピーク電圧オーバーシュートを見ると、低帯域幅を使う測定はスイッチングデバイスに加わるピーク電圧を過小評価することが明らかである。タイミングに依存するデッドタイムの測定においても、システム帯域幅が重要になる。図2(右)において、500MHzと1GHzの帯域幅ではデッドタイムが判別できるが、精密な測定とはいえない。帯域幅がさらに小さくなると、デッドタイム期間がほとんど見えなくなる。表1には、最高速であるEPC8009ベースボードのクリティカルな特性の測定能力に対する帯域幅の影響をまとめている。
EPC9080デモボードを使用したテスト結果も示す。この場合、eGaN FETのオン抵抗が低いことと、キャパシタンスが高いことから、リンギング周波数およびスイッチング速度は低くなる[4]。
対応する波形は、図2(左)である。1GHzプローブで測定したリンギング周波数(fr2)438MHzと振幅(青)は、fr2がシステムの−3dB周波数より低いことから、有効な値になる。1GHz(青)と500MHz(緑)の波形は、細部の全てを正確に捉えている。一方、システム帯域幅350MHz(オレンジ)と250MHz(茶)の場合は、fr2がシステム帯域幅を超えている。
その結果、リンギング波形の形状は捉えているが、リンギングの減衰が明らかであり、そのためオーバーシュートを過小評価している。これらの異なるシステム帯域幅によって測定した立ち上がり時間は、約3ナノ秒だ。使用した最小帯域幅が250MHzであり、これは式(2)から立ち上がり時間1.6ナノ秒に相当する。表2は、測定可能なパラメーターである。
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