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マイコンの“アーキテクチャ”って何?ハイレベルマイコン講座:【アーキテクチャ概論】(1)(1/3 ページ)

すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から3回にわたり、マイコンのアーキテクチャについて詳しく解説する。第1回(=今回)は、まず、CPU(Central Processing Unit)の構成要素と各部の動作について解説し、次に「アーキテクチャ」の各要素についてみていく。

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 マイコンの特長を示す際に、アーキテクチャ(Architecture)という言葉はよく使われるが、その正確な定義はあまりなされていない。例えば、書籍やWebサイトなどでマイコンを紹介する際に「○○シリーズは、単一アーキテクチャで展開されており、互換性が……」や「RISCアーキテクチャによる高速化、高集積化により……」や「Armアーキテクチャで……」などと記述されている。だが、「アーキテクチャとは何か?」の説明はない。

 そこで、本記事では、マイコンのアーキテクチャについて、3回に分けて詳しく解説する。

 最初に「アーキテクチャとは何か?」の概念を説明する。さらに、実際のマイコン製品を使って、具体的な例を紹介しながら、「アーキテクチャ」が意味する個々の要素を詳細に解説する。過去の記事である「連載:Q&Aで学ぶマイコン講座」や「連載:マイコン入門!! 必携用語集」でも、でも、「アーキテクチャ」の構造や構成要素を部分的に説明しているので、これらの記事も引用しながら解説を進める。さらにそれぞれの要素のメリット、デメリットも解説する。

 連載第1回(=今回)は、まず、CPU(Central Processing Unit)の構成要素と各部の動作について解説し、次に「アーキテクチャ」の各要素を解説する。最初は、基本的な「RISCとCISC」、「命令セット」さらに演算ユニットの内部のアキュムレータ方式と汎用レジスタ方式違いの「レジスタ構成」を解説する。

 第2回では、「キャッシュ構成」、「エンディアン(Endian)」、「浮動小数点演算」、「バス構成」、「例外処理」について詳しく解説する。

 第3回では、マイコン内部の命令処理の方式をRISCとCISCに分けて解説する。最初は「RISCの命令の並列処理」と題し、パイプラインとスーパースカラを中心に解説する。次に「CISCの命令の内部処理(μ-OPとμ-プログラム)」と題し、μ-OPとμ-プログラムについて解説する。


マイコンのアーキテクチャとは?

 「アーキテクチャ(Architecture)」を辞書で調べると、「建築術」、「建築学」、「建築様式」、「建物」、「構造」、「構成」という意味が出てくる。マイコンと建築はイメージが結び付かないと思うが、「マイコンの構造や構成」として捉えると、分かりやすいと思う。すなわち、マイコンの内部構造や構成がどのような方式でできているかを意味する言葉が「アーキテクチャ(Architecture)」である。本物の建築物に例えるならば、神社の本殿に「流れ造り」や「春日造り」があり、寺では、清水寺の建築方式が「舞台造り」であるのと同じと考えればよい。

 一般的には、マイコン内部の一部もしくは全体を示す構造や構成に「アーキテクチャ」という言葉が使われる。例えば、CPU内部の構造を示す「1次キャッシュ内蔵」や、バス構成の「ハーバードアーキテクチャ」や、レジスタ構成を示す「汎用レジスタ方式」や「アキュムレータ方式」がアーキテクチャの方式になる。

 マイコンのカタログやマニュアルでは、構造や構成の全項目を説明せずに、代表的な特長を示す要素だけを記述している。マイコンのアーキテクチャについて詳しく解説した専門書も市販されているが、これだと、マイコンユーザーには専門的になりすぎてしまい、マイコンの開発者には向いているが、マイコンユーザーにはハードルが高すぎる。

 そこで、本記事ではマイコンユーザー向けに、「アーキテクチャ」の基本要素を解説する。

 図1にArmのCPUコア「Cortex-M3」、図2に同「Cortex-M7」を例にした具体的なアーキテクチャを示す要素を示す。これらの図を見ると、レジスタ構成やバス構成などの基本的な構成要素から、プロセッサでも用いられているスーパースカラやメモリ管理のキャッシュ構造などの高度な技術要素まで含まれていることが分かる。


図1:アーキテクチャの説明でよく使われる構成要素(Cortex-M3の例)

図2:アーキテクチャの説明でよく使われる構成要素(Cortex-M7の例)

 次ページから、これらの構造や構成要素について詳細に解説する。

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