温度センサーの種類と「熱電対」「測温抵抗体」の使い方:記録計/データロガーの基礎知識(3)(2/4 ページ)
今回は記録計で測定する対象として最も多い温度について解説する。温度測定は研究開発から生産の現場まで応用範囲が幅広く、温度センサーの種類もさまざまあり、用途や測定対象に応じて選ぶ必要がある。利用頻度が高い熱電対と測温抵抗体を中心に解説する。
熱電対の使い方
温度測定で最もよく使われる温度センサーは熱電対である。主に使われる熱電対はJIS C1602規格で特性が定められた熱電対であり、3種類の貴金属熱電対(タイプB、R、S)と5種類の卑金属熱電対(タイプN、K、E、J、T)がある。JIS C1602規格では、その線材、特性、測定可能な温度範囲、クラス(許容差)が定められている。
なお、古いJIS規格では熱電対の種類の名称が現在と異なるため、昔の文献などを見る際には読み替えてみる必要がある場合がある。
種類 | 旧記号 | 構成材料 | 測定範囲 | |
---|---|---|---|---|
+側導体 | −側導体 | |||
B | − | ロジウム30%を含む白金ロジウム合金 | ロジウム6%を含む白金ロジウム合金 | +600〜+1700℃ |
R | − | ロジウム13%を含む白金ロジウム合金 | 白金 | 0〜+1100℃ |
S | − | ロジウム10%を含む白金ロジウム合金 | 白金 | +600〜+1600℃ |
N | − | ニッケル、クロムおよびシリコンを主とした合金 | ニッケルおよびシリコンを主とした合金 | −200〜+1200℃ |
K | CA | ニッケルおよびクロムを主とした合金 | ニッケルおよびアルミニウムを主とした合金 | −200〜+1200℃ |
E | CRC | ニッケルおよびクロムを主とした合金 | 銅およびニッケルを主とした合金 | −200 〜+900℃ |
J | IC | 鉄 | 銅およびニッケルを主とした合金 | −40〜+750℃ |
T | CC | 銅 | 銅およびニッケルを主とした合金 | −200〜+350℃ |
種類 | 測定温度 | 階級 | 許容差 |
---|---|---|---|
B | 600℃以上1700℃未満 | クラス2 | 測定温度の±0.25% |
600℃以上800℃未満 | クラス3 (旧0.5級) |
±4.0℃ | |
800℃以上1700℃未満 | 測定温度の±0.5% | ||
R,S | 0℃以上1100℃未満 | クラス1 | ±1.0℃ |
0℃以上600℃未満 | クラス2 (旧0.25級) |
±1.5℃ | |
600℃以上1600℃未満 | 測定温度の±0.25% | ||
N | −40℃以上+375℃未満 | クラス1 | ±1.5℃ |
375℃以上1000℃未満 | 測定温度の±0.4% | ||
−40℃以上333℃未満 | クラス2 | ±2.5℃ | |
333℃以上1200℃未満 | 測定温度の±0.75% | ||
−167℃以上40℃未満 | クラス3 | ±2.5℃ | |
−200℃以上−167℃未満 | 測定温度の±1.5% | ||
K | −40℃以上375℃未満 | クラス1 (旧0.4級) |
±1.5℃ |
375℃以上1000℃未満 | 測定温度の±0.4% | ||
−40℃以上333℃未満 | クラス2 (旧0.75級) |
±2.5℃ | |
333℃以上1200℃未満 | 測定温度の±0.75% | ||
−167℃以上40℃未満 | クラス3 (旧1.5級) |
±2.5℃ | |
−200℃以上−167℃未満 | 測定温度の±1.5% | ||
E | −40℃以上375℃未満 | クラス1 (旧0.4級) |
±1.5℃ |
375℃以上800℃未満 | 測定温度の±0.4% | ||
−40℃以上333℃未満 | クラス2 (旧0.75級) |
±2.5℃ | |
333℃以上900℃未満 | 測定温度の±0.75% | ||
−167℃以上40℃未満 | クラス3 (旧1.5級) |
±2.5℃ | |
−200℃以上−167℃未満 | 測定温度の±1.5% | ||
J | −40℃以上375℃未満 | クラス1 (旧0.4級) |
±1.5℃ |
375℃以上750℃未満 | 測定温度の±0.4% | ||
−40℃以上333℃未満 | クラス2 (旧0.75級) |
±2.5℃ | |
333℃以上750℃未満 | 測定温度の±0.75% | ||
T | −40℃以上125℃未満 | クラス1 (旧0.4級) |
±0.5℃ |
125℃以上350℃未満 | 測定温度の±0.4% | ||
−40℃以上133℃未満 | クラス2 (旧0.75級) |
±1.0℃ | |
133℃以上350℃未満 | 測定温度の±0.75% | ||
−67℃以上40℃未満 | クラス3 (旧1.5級) |
±1.0℃ | |
−200℃以上−67℃未満 | 測定温度の±1.5% |
熱電対の種類によって特長が異なるため、測定対象に合わせて種類を選択する必要がある。
種類 | 長所 | 短所 |
---|---|---|
B | ・1000℃以上の測定に適する。 ・常温での熱起電力が微小のため補償導線が不要。 ・耐酸化、耐薬品性が良い。 |
・600℃以下の測定は熱起電力が小さく不向き。 ・感度が低い。 ・熱起電力の直線性が良くない。 ・高価。 |
R, S | ・精度が良くバラツキや劣化が少ない。 ・耐酸化、耐薬品性が良い。 ・標準用として使用可能。 |
・感度が低い。 ・還元性雰囲気(特に水素、金属蒸気)に弱い。 ・補償導線の誤差が大きい。 ・高価。 |
N | ・熱起電力の直線性良好。 ・1200℃以下での耐酸化性良好。 ・ショートレンジオーダリングの影響少ない。 |
・還元性雰囲気に不適。 ・貴金属熱電対に比べて経時変化が大きい。 |
K | ・熱起電力の直線性が良い。 ・1000℃以下での耐酸化性が良い。 ・卑金属熱電対の中では安定性が良好。 |
・還元性雰囲気に不適。 ・貴金属熱電対に比べて経時変化が大きい。 ・ショートレンジオーダリングによる誤差が生じる。 |
E | ・熱起電力が大きい。 ・Jに較べ耐蝕性、耐酸化性が良い。 ・両脚が非磁性。 |
・還元性雰囲気に不適。 ・電気抵抗が大きい。 |
J | ・還元性雰囲気中で使用可。 ・熱電能がKより約20%大きい。 |
・+脚の鉄がさびやすい。 ・特性にばらつきが大きい。 |
T | ・熱起電力の直線性良好。 ・低温での特性良好。 ・品質のばらつきが少ない。 ・還元性雰囲気中で使用可能。 |
・使用限度が低い。 ・+脚の銅が酸化しやすい。 ・熱伝導誤差が大きい。 |
出典:新温度計の正しい使い方 社団法人日本電気計測器工業会編 日本工業出版 |
熱電対の寿命は使用する温度や雰囲気で大きく変わるが、一般的に酸化雰囲気中でかつ、JIS規格で定められている常用限界温度で使うと貴金属熱電対(B、R、S)で約2000時間、卑金属熱電対(N、K、E、J、T)は約1万時間程度が目安である。それが過熱使用限度温度で使うと50〜250時間と寿命は大幅に短くなる。熱電対が寿命に近づくと正常な温度を示さなくなり、最終的には断線して使えなくなるため、熱電対の使用環境を考慮して使う必要がある。
熱電対を使った測定でよくあるトラブル事例
熱電対を使って温度測定をする場合は、熱電対は高価であるため記録計と温度測定点が近い場合には熱電対だけを使うが、熱電対で測定するところが記録計まで離れている場合は、外気温の範囲で熱電対とよく似た特性を示す安価な補償導線と熱電対を組み合わせて使用する。このため補償導線の選定や接続の誤りによるトラブルが発生することがある。
- 補償銅の選定が誤っている。もしくは補償導線でなく銅線が使われる
- 熱電対と補償導線の接続が逆になっている
熱電対はさまざまな種類があるので、記録計に設定した熱電対の種類と実際の熱電対が異なり、正しい温度測定ができないトラブルがある。
その他、熱電対を直接記録計に接続した時に基準接点温度補償を外部の設定になった場合もトラブルの原因になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.