プログラマブル直流安定化電源の市場動向や種類:プログラマブル直流安定化電源の基礎知識(1)(3/5 ページ)
直流電源はさまざまな分野で使われているため、多くの製品が市場にある。今回の解説では、製品の開発や生産の現場で使われているプログラマブル直流安定化電源のうち、対象物にエネルギーを供給する試験用電源について、「製品の種類、機器選定での留意点、製品の内部構造、使用上の注意点、利用事例の紹介」などの基礎知識を紹介していく。
試験用直流電源の種類
計測用に使われる直流電源はさまざまなタイプがある。ここでは切り口を変えて直流電源の種類を見てみる。
安定化の方式で分ける
直流安定化電源は2つの方式がある。1つ目はドロッパ方式である。ドロッパ方式は、リニア方式、シリーズレギュレーター方式とも呼ばれることもある。ドロッパ方式は、1960年から電気学会標準電子回路専門委員会で3年間にわたり検討され、その成果は広く知られることになり、ドロッパ方式の普及に貢献した。
2つ目は1970年代に登場したスイッチング方式である。スイッチング電源は、宇宙開発で要求される高効率で軽量な電源から始まって、小型化と高効率化が進み現在では多くの電気製品で使われている。
それぞれの特長は一般に下記のようになる。
ドロッパ(リニア)方式 | スイッチング方式 | |
---|---|---|
回路構成 | 単純 | 複雑 |
制御動作 | 降圧 | 降圧・昇圧・極性反転 |
応答 | 早い | 遅い |
出力ノイズ | 少ない | 多い |
体積・重さ | 重くて大きい | 軽くて小さい |
発熱 | 多い(効率が悪い) | 少ない(効率がよい) |
表2:ドロッパ方式とスイッチング方式の比較 |
出力容量で分ける
市販されている直流電源を容量で分類すると、下記のようになる。厳密な区分ではないが、容量によって用途が異なってくる。
区分 | 容量 | 利用例 |
---|---|---|
小型 | 〜0.3kW | 小規模な電子回路の評価、教育のための実験 |
中型 | 0.3〜5kW | 自動車用補器の試験、電力用半導体の試験 |
大型 | 5〜10kW | 電動パワーステアリング、住宅用パワーコンディショナーの試験 |
超大型 | 10kW〜 | 駆動用車載インバーター、大型パワーコンディショナーの試験 |
表3. 出力容量による分類 |
レンジ制御方式で分ける
直流電源は、最大出力電圧と最大出力電流がどの設定状態でも同じな固定単一レンジの製品が広く普及していたが、最近はワイドレンジの製品が増えてきた。菊水電子工業のワイドレンジ電源であるPWR401Lを事例に動作を示す。
この電源では、10Vまでの定電圧出力場合は最大40Aまで出力できる。また、40Vの定電圧出力の場合は最大10Aまでとなる。
単一固定レンジの直流電源であれば電圧を可変しても電流値が一定であるので、400Wモデルで最大40V出力の直流電源では、10Vに設定しても10Aまでしか出力は得られなかった。
ワイドレンジの電源は一般に固定レンジの電源に比べて、価格は高いが1台で対応できる範囲が広いため、用途が多様な場合は便利である。
ワイドレンジという機能はメーカーによって表現が異なる場合があるので注意を要する。現在、市場にある直流電源に搭載された同じ機能がオートレンジ、マルチレンジ、ズームと表現されている。
卓上型と薄型
直流電源の多くは、正面パネルから操作をしやすいように設計されている。このため、ケース形状は操作しやすい高さになっている。組み込みシステム専用電源の場合はパネルからの操作はほとんど行わず、通信からの制御もしくは設定を固定にしての利用が主となる。組み込みシステム専用電源の場合はスペース効率が優先されるため、ラックに多くの電源が実装できる薄型となる。
ユニット当たりの出力数
多くの直流電源は、ユニット(筐体)当たりの出力数は1つであるが、狭い実験ベンチの上に多くの電源装置を並べるのはスペース効率がよくないので、一つの電源ユニットに複数の出力を持つものがある。このような電源は、複数の出力を同期させて変化させることができる機能や、出力のオンのタイミングを出力ごとに遅延させる機能も搭載されている。
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