プログラマブル直流安定化電源の市場動向や種類:プログラマブル直流安定化電源の基礎知識(1)(4/5 ページ)
直流電源はさまざまな分野で使われているため、多くの製品が市場にある。今回の解説では、製品の開発や生産の現場で使われているプログラマブル直流安定化電源のうち、対象物にエネルギーを供給する試験用電源について、「製品の種類、機器選定での留意点、製品の内部構造、使用上の注意点、利用事例の紹介」などの基礎知識を紹介していく。
よい直流電源とは
ここでは、直流電源を選ぶ場合の留意すべき項目について述べる。
出力の変動要因
直流電源を定電圧源(CV:Constant Voltage)や定電流源(CC:Constant Current)として利用する場合、設定した出力状態は下記のような外部要因により変動する。
- 負荷の変動
- 入力電源の変動
負荷変動は、電源の出力インピーダンスや制御性能によって変わってくる。負荷が変動して電源から出力される電流や電圧に変化があった時の出力の変化を示す仕様として、負荷変動率(ロードレギュレーション)がある。無負荷と全負荷の時の差を示す。
入力電源変動は、商用電源(日本ではAC100V)の電圧変動によって出力が変化する。日本の商用電源は安定しているが、海外では商用電源の電圧が安定しない地域がある。入力電源変動率(ラインレギュレーション)は、規定された入力電源電圧の範囲での出力の変化率を仕様として示している。
電力変換効率
商用電源から入力した電気エネルギーをどの程度効率よく出力に変換できるか、という指標である。スイッチング方式直流電源は仕様に効率が規定されている。
下記には菊水電子工業のスイッチング方式直流電源の効率を示す。いずれも70%以上の効率となっている。
シリーズ | レンジ制御 | 効率 |
---|---|---|
PWR-01 | ワイドレンジ | 400Wモデル 75%typ |
800Wモデル 75%typ | ||
1200Wモデル 75%typ | ||
2000Wモデル 75%typ | ||
PWR | ワイドレンジ | 70%以上 |
PAV | 固定レンジ | 200Wモデル:AC100V入力時 76〜79%typ(機種により異なる) |
200Wモデル:AC200V入力時 77.5〜81%typ(機種により異なる) | ||
400Wモデル:AC100V入力時 81〜87%typ(機種により異なる) | ||
400Wモデル:AC200V入力時 83〜88.5%typ(機種により異なる) | ||
600Wモデル:AC100V入力時 80〜84%typ(機種により異なる) | ||
600Wモデル:AC200V入力時 82〜86%typ(機種により異なる) | ||
PAT-T | 固定レンジ | 4kWモデル 84〜85%以上(機種により異なる) |
8kWモデル 85%以上 | ||
PWX | ワイドレンジ | 750Wモデル 74%以上 |
1500Wモデル 74%以上 | ||
PAG | 固定レンジ | 750Wモデル:AC100V入力時 76〜83%typ(機種により異なる) |
750Wモデル:AC200V入力時 78〜87%typ(機種により異なる) | ||
1500Wモデル:AC100V入力時 77〜84%typ(機種により異なる) | ||
1500Wモデル:AC200V入力時 79〜88%typ(機種により異なる) | ||
2400Wモデル:AC200V入力時 84〜88%typ(機種により異なる) | ||
3300Wモデル:AC200V入力時 82〜88%typ(機種により異なる) | ||
5000Wモデル:AC200V入力時 83〜88%typ(機種により異なる) | ||
表4:菊水電子工業のスイッチング方式直流電源の効率仕様※PWRシリーズは生産終了となっている |
ドロッパ方式直流電源は仕様に効率は規定されていないが、一般に25〜50%となっている。直流電源の損失は全て熱となるため、スイッチング方式直流電源に比べてドロッパ方式直流電源の発熱は大きくなる。
力率
スイッチング方式直流電源は回路構成上、入力側に大きな容量の電解コンデンサーが接続されているため、一次側の入力電流がとがった波形となり、結果として力率を低下させる。低力率の電源装置を使うと受電設備に影響が生じる恐れがある。
力率の低下を起こしやすい単相入力のスイッチング方式直流電源では、ほとんどの製品で力率改善(PFC)回路が搭載されている。
ノイズ対策
直流電源が外部からのさまざまなノイズの影響を受けないこと、また直流電源からノイズの発生を抑制することが求められる。直流電源は国際規格に準拠した試験を行い、適合していることが求められる。
ノイズの影響を受けない性能をノイズイミュニティという。国際規格のIEC61000-4規格で測定法が標準化されている。この規格では電源変動や瞬低、電源高調波、静電ノイズ、雷サージ、磁界、高周波電界に対しての試験法と判定基準が定められている。菊水電子工業のコンパクト・ワイドレンジ直流電源 PWR-01シリーズの仕様を見ると、EN61326-1 Class Aに適合していると書かれている。これはIEC61000-4のイミュニティ試験に適合していることを示す。
ノイズを発生することをノイズエミッションという。スイッチング電源は高速に動作する回路が使われているため、伝導ノイズが放射ノイズを発生する。菊水電子工業のコンパクト・ワイドレンジ直流電源 PWR-01シリーズの仕様を見ると、EN55011とEN61000-3-2、EN61000-3-3に適合していると書かれている。これは国際規格CISPR 11とIEC61000-3-2、IEC61000-3-3に適合していることを示す。
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