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どのノイズ対策が最も効果的か? よくあるEMS対策を比較する【準備編】:ハイレベルマイコン講座【EMS対策】(1)(3/3 ページ)
すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回から2回にわたって、一般的なEMS(電磁耐性)のノイズ対策手法を実際に試し効果を比較し、各ノイズ対策手法を考察する。
実験内容
それぞれマイコンの端子からノイズが侵入する場合と、マイコンを使った製品の筐体に印加されたノイズが間接的にマイコンに侵入する場合で2通りの実験をする。
マイコンの端子からノイズが侵入する場合は、ノイズの侵入経路が明確であるため、そこに対策を施す。具体的には、撚線、フェライトコア、チョークコイル、コンデンサーである。ノイズが間接的にマイコンに侵入する場合では侵入経路を断定できないため、マイコン全体のシールド、デカップリングコンデンサーの強化、全体の配線の最適化などを実施する。
それぞれ実験1と実験2が前者に、実験3が後者に相当する。
- 実験1:リセットラインのノイズ耐量の測定
- リセットラインの配線被覆の上からノイズを印可する。
- ノイズ対策は撚線とフェライトコアを用いる。
- リセットラインはマイコンの制御信号の1つで、かつマイコンの動作に強く影響を及ぼす信号であるため、ノイズ対策を施し対策の効果をチェックする(図4)
- 実験2:汎用IOラインのノイズ耐量の測定
- 汎用IOラインの配線被覆の上からノイズを印加する。
- 実使用上は汎用IOにノイズが入ることが多いため実施する。ノイズ対策はチョークコイルとコンデンサーを用いる(図5)
- 実験3:マイコンが実装されたユニバーサルボードをアルミ板で挟み、アルミ板にノイズを印加する(一般的に空中放電といわれるノイズの印加方法)
- 電子回路には直接ノイズが入力されないが、ユーザーの製品の筐体にノイズを印加し、内部に実装されているマイコンのノイズ耐量をチェックする。この実験では、デカップリングコンデンサーの強化、不要な配線を除去(=「アンテナ」を減らす)、マイコンのシールドの3つの対策をチェックした。さらに、発振回路が対ノイズ性に及ぼす影響もチェックする(図6)
実験の詳細と結果は、次回に解説する。
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