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デルタ−シグマADCでの電圧リファレンスノイズの影響アナログ設計のきほん【ADCとノイズ】(8)(2/3 ページ)

さまざまなノイズ源が高精度デルタ−シグマADCに与える影響をより深く理解するために、電圧リファレンスノイズについて取り上げます。

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ノイズの量を判断するために重要な3つの点

 電圧リファレンスで追加されるノイズの量を判断するために、図2ではADCノイズ、リファレンスノイズおよび、合成ノイズの関係を、フルスケール範囲(FSR)の使用率の関数として示します。図2および、これ以降の説明は、ADCノイズがリファレンスノイズよりも低い場合(NADC<NREF)に適用できます。逆の場合は(NADC>NREF)、ADCノイズの方が相対的に高いため、電圧リファレンスのノイズを低減してもほとんどあるいはまったくメリットがないでしょう。


図2:正のFSR使用率の関数としてのADCノイズ(青の棒グラフ)、リファレンスノイズ(赤の棒グラフ)、ADCノイズとリファレンスノイズの合成(緑の線グラフ)

 図2には3つの重要な点があります。

【点A】

 この点は、入力電圧が0Vのときの総ノイズです。点Aは入力短絡によるノイズ測定テストの定義と同じ条件を使用するため、ADCのデータシートから直接読み取れます。


【点B】

 この点は、入力電圧がリファレンス電圧と等しいときの総ノイズです。つまり、フルスケールの値です。一般に、リファレンスノイズとADCノイズの二乗和平方根(RSS)をとって点Bを確定します。しかし、図2のケースのようにADCノイズよりリファレンスノイズの方がずっと大きいと、点Bはリファレンスノイズのみの場合とほぼ近似になります。どちらにしても、電圧リファレンスノイズの値は電圧リファレンスのノイズ特性などのいくつかの要素に左右されるため、一般的にデータシートから直接読み取ることはできません。図3に、2.5V高精度電圧リファレンスであるTIの「EF6025」の出力ノイズスペクトル密度を示します。


図3:「REF6025」の出力ノイズ・スペクトル密度のプロット図

 図3で、低周波数ではノイズ密度が著しく増加する(1/fノイズ)のに対し、高周波数ではノイズ密度が比較的平らである(広帯域ノイズ)ことに注目してください。前回(連載第7回)で解析したいくつかのアンプのように、リファレンス・ノイズ特性はどの周波数でも一定であるとは限りません。

 幸い、直接積分または簡易化された式などの、アンプノイズの計算に使用したのと同じ方法を用いて、リファレンスノイズを計算することができます。有効ノイズ帯域幅(ENBW)によりシステムに入るリファレンスノイズのカットオフ周波数が分かるため、この方法を用いるにはシステムのENBWも計算する必要があります。


【点C】

 この点は、両端の点Aと点Bの間にある任意の一般的なノイズ値です。点Cを算出するには、式2を用います。

式2

 式2で、点BはFSRの使用率に応じて増減します。一般に、式2を用いることで、点Aと点Bを含め、図2のグラフの任意の点での総ノイズを確定できます。

 式2の結果で1つ重要なのは、NADC<NREFという条件だとすると、使用率に関係なくリファレンスノイズが支配的になる点が存在することです。この点のときに信号振幅を増加しても、ノイズ特性へのメリットはありません。これは、一般的に信じられている、入力信号のゲインを上げると必ずノイズが減少するという考えとは一致しません。

 むしろ、システムのノイズ要件を満たすには、ゲインの増加とFSR使用率のバランスを取ることが必要です。では、例を使ってゲインとリファレンスノイズの関係を確認しましょう。

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