5G OTAテストのコンセプトと定義:チップセット測定〜モバイルデバイス性能検証(2/3 ページ)
第5世代移動通信(5G)では、従来の移動体通信で使用されてきた周波数帯に加えミリ波が用いられることにより、チップセットの測定からモバイルデバイスの性能検証で、Over-The-Air(OTA)環境でのテストが必須となります。ここでは、5G OTAテストのセットアップに関して知っておくべきコンセプトを紹介します。
レンジ長:プローブとDUT間の距離
測定結果を安定して正確に得られるように、レンジ長を最適化しなければなりません。上述のように遠方界(FF)での測定が求められる場合、レンジ長は𝑅=2𝐷2/λ以上の距離を維持することが推奨されます。
したがって、測定すべき波長(周波数)とデバイスのアンテナサイズの両方が、電波暗室のサイズに直接影響します。例えば、5cmアンテナ(28GHz)での遠方界(FF)は約50cmです。同じ周波数でも10cmモジュールでは190cmに増え、15cmデバイスでは4m以上にもなります(図2)
DUT:ミリ波OTAテストセットアップにおけるデバイス特性
DUTは、放射素子からデバイス全体までさまざまです。ハンドセットの場合、DUTの“D(開口部)”はアンテナの物理的な大きさ以外に放射素子への結合までを含みます。3GPP(3rd Generation Partnership Project)では3つのDUTアンテナ構成を定義しています。
- 構成1:DUTは最大1個のアンテナパネルを持ち、常時アクティブな最大5cm四方の開口部。
- 構成2:DUTは2個以上のアンテナパネルを持ち、それぞれ常時アクティブな最大5cm四方の開口部ですが、コヒーレントではありません。つまりそれぞれ独立したパネルとして処理可能です。
- 構成3:DUTには複数のアンテナパネルがあり、その間は位相/振幅のコヒーレントな状態です。つまり、独立したパネルとしては扱うことはできず“D”はすべてのパネルを囲む必要があります。
ブラックボックステスト:アンテナの位置を知らない状態でのDUTのテスト
ブラックボックステストは、3GPPにおけるデバイスのコンフォーマンステストで必須の概念です。エンジニアは、アンテナの位置と個数を知らないものとして処理する必要があります。
つまりDUTは「ブラックボックス」として処理され、アンテナの開口部(D)はDUT全体と同じサイズと想定しなければなりません。
したがって、デバイス構成は放射性遠方界(FF)測定で必須レンジ長の影響を受けます(図4)
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