デジタルオシロスコープの歴史や種類:デジタルオシロスコープの基礎知識(1)(2/5 ページ)
電子回路技術者にとって日々使う道具である「オシロスコープ」。原型は19世紀末に登場しており、その後のエレクトロニクス技術の進化によって高性能化や高機能化が進んだ。現在では、単なる現象の変化を波形として目視で観測するための測定器から、取り込んだ波形データを加工してさまざまな測定値を得ることができる複合測定器となってきている。今回の連載では、オシロスコープとプローブについて歴史、製品の種類、機種選定のポイント、製品の内部構造、製品仕様、トリガ機能、演算機能、プローブ、校正についての基礎知識を紹介していく。
デジタルオシロスコープ
1970年代初頭に、テクトロニクス、レクロイ、ニコレの各社は現在のデジタルオシロスコープにつながる開発を行っていた。当時、テクトロニクスの技術者であった広島県呉市出身のHiro Moriyasu氏が黎明期のデジタルオシロスコープ開発に貢献したことは、日本ではあまり知られていない。
下記は、テクトロニクスが1973年に発売した黎明期のデジタルオシロスコープである。当時はDPO(Digital Processing Oscilloscope)と呼ばれていた。アナログオシロスコープにA/D変換器、波形メモリに磁気コアメモリ(小さなドーナツ状のフェライトコアを磁化させることにより情報を記憶させる、現在は使われなくなったメモリ部品)を取り付け、データ処理は外部に接続されたコンピュータ(PDP-11)で行った。現在のマイクロプロセッサを搭載したデジタルオシロスコープと、基本的な仕組みは変わらない。
高速A/D変換器が登場するのは1980年代中ごろ以降のため、各社からデジタルオシロスコープが数多く登場して普及が拡大するのは、1990年以降となる。
CCDを用いた初期のデジタルオシロスコープ
高速A/D変換器が登場する以前のデジタルオシロスコープで高速現象を観測するために、1969年にベル研究所で発明されたCCD(Charge Coupled Device、電荷結合素子)が用いられた。現在では、CCDと光センサーを一体にした画像センサーがカメラなどで利用されるが、CCDはアナログ信号を高速に記録するアナログメモリとして利用できる。高速現象をCCDメモリに高速に保存して、その後A/D変換器で低速に読みだせば高速現象を観測できる。
テクトロニクスでは、1982年に7000シリーズのプラグイン7D20として、CCDを使った最初の70MHz帯域、40Mサンプル/秒、8ビット、波形メモリ1024ワードのデジタルオシロスコープを実現した。その後、1986年に発売されたテクトロニクスの2430は、2チャンネル、150MHz帯域、100Mサンプル/秒、8ビット、波形メモリ1024ワードのCCDメモリを使ったデジタルオシロスコープであった。1988年に発売された同じシリーズの最上位機種の2440は、300MHz帯域、500Mサンプル/秒であった。
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