デジタルオシロスコープの歴史や種類:デジタルオシロスコープの基礎知識(1)(3/5 ページ)
電子回路技術者にとって日々使う道具である「オシロスコープ」。原型は19世紀末に登場しており、その後のエレクトロニクス技術の進化によって高性能化や高機能化が進んだ。現在では、単なる現象の変化を波形として目視で観測するための測定器から、取り込んだ波形データを加工してさまざまな測定値を得ることができる複合測定器となってきている。今回の連載では、オシロスコープとプローブについて歴史、製品の種類、機種選定のポイント、製品の内部構造、製品仕様、トリガ機能、演算機能、プローブ、校正についての基礎知識を紹介していく。
高速A/D変換器を用いたオシロスコープの登場
1980年代になると、テレビ画像の高画質化の研究が進み、高速A/D変換器が活発に開発されるようになった。この研究成果から生まれた100Mサンプル/秒以上の高速A/D変換器が市販されるようになり、デジタルオシロスコープに搭載されるようになった。初期の高速A/D変換器を搭載したデジタルオシロスコープは、取り込んだ波形がCPUによって画像処理されたため、大容量の波形メモリを搭載すると画像が表示されるまでの時間がかかるという欠点があった。
波形メモリの容量が小さなデジタルオシロスコープでは、現在でも波形データ処理を全てCPUで行うものがある。
1991年に発売されたテクトロニクスのTDS340は、2チャンネル、100MHz帯域、500Mサンプル/秒、8ビット、波形メモリ1kワード(オプションで50kワード)の高速A/D変換器を搭載したデジタルオシロスコープであった。
高速デジタル画像処理機能の搭載が進む
デジタルオシロスコープは、A/D変換器によって取り込んだ大量の波形データを処理して画像データに変換するためにデッドタイムが必要となり、波形の取りこぼしが生じて波形更新レートが速いアナログオシロスコープとは、表示が異なって見えることがある。
波形の取りこぼしがあると、発生頻度の少ない異常波形を捕らえることが難しくなり、回路評価を効率的に行えない課題があった。
波形更新レートを早くするためには、高速に波形データを処理できる画像処理DSP(digital signal processor)を搭載して、効率的なアルゴリズムで波形データを表示できるようにする必要がある。
最近の多くのオシロスコープは、波形データ処理を高速に行うための画像処理DSP回路を搭載している。
画像処理DSPは波形更新レートを早くするだけではなく、輝度階調を付けることによってアナログオシロスコープのような表示ができるようになった。下記には、ビデオ波形をアナログオシロスコープで観測した場合(左)、初期のデジタルオシロスコープで観測した場合(中)、最近の高性能デジタルオシロスコープで観測した場合(右)を示す。
1999年、テクトロニクスは画像処理DSPを搭載したデジタルオシロスコープTDS3000シリーズを発売した。この製品の登場によって、アナログオシロスコープとデジタルオシロスコープの画面の見え方の差はほぼなくなった。
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