デジタルオシロスコープの基本仕様やトリガー機能:デジタルオシロスコープの基礎知識(2)(5/6 ページ)
連載2回目の今回は、オシロスコープの「基本仕様の理解」「トリガー機能」「パラメーター測定および演算機能」「波形データの印字、保存、通信」について解説する。
パラメーター測定および演算機能
デジタルオシロスコープは、取り込んだ波形データをそのまま表示するだけではなく、波形のデータ値の表示や、目的にあった演算を行い加工する機能を持っている。
波形パラメーター測定
アナログオシロスコープにもあったカーソル表示に加えて、各種波形パラメーターを抽出できる機能を持っている。例えば、テクトロニクスのMDO4000では30項目の波形パラメーターの抽出ができ、そのうち同時に8項目の表示ができる。
MDO4000にある30項目の波形パラメーター
周波数、周期、遅延、立ち上がり時間、立ち下がり時間、正のデューティサイクル、負のデューティサイクル、正のパルス幅、負のパルス幅、バースト幅、位相、正のオーバシュート、負のオーバシュート、トータルオーバシュート、P-P、振幅、ハイ、ロー、最大値、最小値、平均値、サイクル平均値、実効値、サイクル実効値、正のパルスカウント、負のパルスカウント、立ち上がりエッジカウント、立ち下がりエッジカウント、面積、サイクル面積
観測できる波形パラメーターは測定器メーカーや製品によって異なるので、この機能を利用する場合は、製品仕様を事前に確認する必要がある。
四則演算機能
取り込んだ波形データに四則演算を行って、新たなデータを作り出す機能である。例えば、この機能を使う用途して電源回路のスイッチング損失測定がある。スイッチング素子の両端の電圧を差動プローブにより測り、スイッチング素子に流れる電流を電流プローブによって測定する。得られた電圧値と電流値を掛け算すれば、損失した電力が得られる。ただし、オシロスコープの精度は高くないので、測定した損失の確度を規定することは難しい。このため、測定結果は目安として利用することになる。
スイッチング損失を測定する際には、電圧と電流の位相を合わせる必要があるため、下記のようなツールを使って測定前にスキュー調整を行う。
FFT演算機能
オシロスコープは時間軸の信号波形を観測するものであるが、FFT演算を行って周波数軸で波形を観測することができる。ただし、オシロスコープに搭載されたA-D変換器の分解能が高くないので、高ダイナミックレンジの観測ができない。
観測した信号にノイズが重畳している場合、FFT演算機能を使うとノイズ成分からノイズ発生源を特定できることがある。
FFT演算を行う場合は、窓関数を設定することになる。オシロスコープに取り込んだ波形を切り出してそのままFFT演算を行うと、切り出した波形の両端が不連続となり、結果としてFFT演算した結果のパワースペクトラムが、ピークの近傍に漏れ出してしまう。
そこで、取り込んだ波形に窓関数をかけて、漏れ(リーケージ)を防ぐようにする。窓関数にはさまざまなものがあるが、一般には方形(レクタンギュラ)、ハニング、ハミング、フラットトップなどがある。
時間ジッタ測定機能
オシロスコープで取り込んだ波形データからヒストグラム作り、統計処理によって時間ジッタを求めることができる。時間ジッタは高速デジタル回路や通信などのエラーレートと相関があるため、時間ジッタ測定をオシロスコープだけで実現できることは、評価の効率化につながる。
時間ジッタには「周期ジッタ(P)、サイクル間ジッタ(C)、タイムインターバルエラー(TIE)」があり、それぞれの関係は下記の通りである。
周期ジッタはトリガー点を固定すれば、波形を重ね書きすることにとって簡単に観測される。タイムインターバルエラーを測定するには、外部から基準クロックを得るか、クロック位置を推定する機能が必要となる。最近のオシロスコープでは、全てのジッタを測定できる機能が搭載されているものがある。
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