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GaNで高効率な電源設計を、駆動方法がポイントに次世代パワー半導体(1/2 ページ)

あらゆるパワーエレクトロニクスアプリケーションにおける主要評価基準の一つが電力密度です。これは、効率やスイッチング周波数の向上によって大幅に改善されます。シリコンをベースとした技術は進化の限界に近づいているため、設計エンジニアはソリューションを提供すべくGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ技術に関心を向け始めています。

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低コストなGaN

 あらゆるパワーエレクトロニクスアプリケーションにおける主要評価基準の一つが電力密度です。これは、効率やスイッチング周波数の向上によって大幅に改善されます。シリコンをベースとした技術は進化の限界に近づいているため、設計エンジニアはソリューションを提供すべくGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップ技術に関心を向け始めています。

 GaNは、新しい技術としては珍しく、置き換えようとしている技術、つまりシリコンに比べると本質的に低コストです。GaNデバイスは、シリコンデバイスと同じ工場で、同じ製造工程を用いて製造されるからというのがその理由の一つです。GaNデバイスは同等のシリコンデバイスよりも小さいため、ウエハー1枚当たりから取れるチップ数が多く、個々のチップのコストを下げることができるのです。

 GaNには、シリコンに比べはるかに大きな電子移動度(3.4eV対1.1eV)を持つなど、多くの性能上のメリットがあり、シリコンに比べて1000倍以上の効率で電子を伝導できる能力があります。重要なのは、ゲート電荷(QG)はGaNの方が低く、スイッチングサイクルごとに補充する必要があるため、シリコンが100kHzを超えるとてこずるのに対し、GaNは最大1MHzの周波数において効率低下を招くことなく動作できることです。また、シリコンとは異なり、GaNにはボディダイオードがなく、AlGaN/GaN界面の2DEG(2次元電子ガス)は逆方向に電流を流すことができます(「第3象限」動作)。その結果、GaNには逆回復電荷(QRR)が存在せず、ハードスイッチングアプリケーションに最適です。


図1:高速スイッチングに最適なGaN (クリックで拡大)

 GaNはアバランシェ能力が限られており、シリコンよりも過電圧に敏感なため、ドレイン-ソース間電圧(VDS)がレール電圧にクランプされるハーフブリッジトポロジーに理想的です。ボディダイオードがないためGaNはハードスイッチングのトーテムポールPFCに適しており、共振LLCやアクティブクランプフライバックなどのゼロ電圧スイッチング(ZVS)アプリケーションでの使用にも最適です。

 電力レベルが45〜65Wの急速充電アダプターにはGaNベースのアクティブクランプフライバックが有効ですが、LLCベースのGaNは、ゲーミング用などのハイエンドノートPC向け150〜300W電源アダプターに採用されています。これらのアプリケーションでは、GaN技術の使用により電力密度を2倍にできるので、アダプターを小型化、軽量化することが可能です。特に、関連する磁気部品を小型化でき、例えば、電源トランスのコアなら、RM10から低背型または平面型のRM8に変えることができます。

 多くのアプリケーションで、このように電力密度が2倍あるいは3倍になり、30W/in3の電力密度を達成することも可能になります。

 サーバ、クラウド、通信システム用電源、特にトーテムポールPFCをベースとした電源などの高電力アプリケーションでは、GaNによって99%を超える効率を達成できます。これらのシステムは、80PLUSの上位規格である「Titanium」など極めて重要かつ厳格な効率規格を満たすことができるようになります。

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