車載ネットワークを静電破壊から守る「保護素子」:「適切な使い方」を知る(1/2 ページ)
クルマでは自動運転に向け、低速のCANやLIN、高速のEthernetやHDBase-Tなど車内通信ネットワークが多数使われるようになってきた。車内通信ネットワークをサージや静電破壊から守るためには、保護回路を適切に使う必要がある。
多様になってきた車載ネットワーク
クルマでは自動運転に向け、低速のCANやLIN、高速のEthernetやHDBase-Tなど車内通信ネットワークが多数使われるようになってきた。人の命を預かるクルマでは安全性と信頼性が欠かせない。通信ネットワークにノイズが乗れば、それによって静電破壊(ESD)を起こす恐れもある。車内通信ネットワークをサージや静電破壊から守るためには、保護回路を適切に使う必要がある。本稿では、車内ネットワークにおける保護部品の使い方を解説する。
従来の自動車には、多くの電子システムが基本的に独立して搭載されていた。だが昨今、コネクティビティが拡大し、機械学習をはじめとするAI(人工知能)技術が発達し、自動車エレクトロニクスが劇的に変化してきた。自動車は、車種を問わず複雑になり、相互接続された通信センターとなりつつある。そして、クルマに搭載されるインテリジェンスは、さらに“賢く”なるばかりだ。
ブロードバンド並みの車載通信を実現しながら、コネクティビティを改善するため、新しいプロトコルが策定されつつある。V2X(Vehicle to everything)技術は、V2V(Vehicle to Vehicle:車車間)およびV2I(Vehicle to Infrastructure:路車間)通信を支援するために設計され、衝突を防止して、より円滑な交通を実現する。米国運輸省は、V2Vは自動車事故を最大79%防ぐと考えている。
こうしたV2X関連の技術では、高解像度カメラやレーザーおよびレーダーセンサー、ワイヤレス接続機能といった主要サブシステム間の高速データ通信の速度と効率を飛躍的に上げるため、EthernetやHDBaseTの自動車版規格を取り入れるようになっている。
コネクティビティが向上すると、自動車はより安全に、より多くのことができるようになるが、一方でそれらのシステムを設計するエンジニアは、多くの技術的課題を抱えることになる。
自動車用チップセットは、進化すればするほど、さらに小さく高密度になり、静電気放電(ESD)に対しての脆弱性が増す。従って、チップセットの信頼性を高めるために、どのようにしてチップセットを保護するかを理解する必要がある。
V2VやV2Iのオンボード電源回路/通信回路には、ヒューズやPPTC、TVSダイオード、TVSダイオードアレイ、多層バリスタ(MLV)、ポリマーESDサプレッサを使用した、過電流や静電気放電(ESD)保護、サージ保護が必要になる。上の図では、Littelfuseの逆直列TVSダイオード「AQ3045シリーズ」を保護素子として使用している。
チップセットは極めて繊細になり、データ通信はより高速化が求められるようになるため、こうした新しいプロトコルを利用する自動車モジュールでは、並外れたESD保護性能を確保する必要がある。コンパクトに収められた低容量、低クランピング電圧のESD保護デバイスによって、最新自動車の運転では、安全性、信頼性、そして効率が上がる。
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