アクティブ・クランプ・フライバック設計を最適化する方法:電源設計のヒント(2/2 ページ)
高周波数のスイッチングでも、フライバックトポロジを最適化して効率をはるかに高められる新しい方法があります。この記事では、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)が可能なアクティブクランプフライバックトポロジで電力密度を高められる仕組みを説明し、さらなる効率向上のためにトポロジを最適化する2通りの方法を紹介しようと思います。その1つはスイッチノード容量の削減、もう1つは2次共振回路の利用です。
2次共振回路の利用
2次共振と呼ばれる手法によりQHのRMS電流を削減することで、さらなる効率向上が可能です。1次共振では、トランスの消磁時間の間、そのリークインダクタンスはクランプコンデンサーのみと共振します。図4に示すように、2次共振では出力に単純なインダクター/コンデンサーフィルターを使用して、追加された2次共振コンデンサー(Csec_res)とリークインダクタンスを共振させ、CClamp>>Csec_res/(1次/2次巻線比)2となるようにします。
図5は、同じ回路で1次共振(左図)と2次共振(右図)の両方を用いたものです。両方ともまったく同じ仕様でありながら、2次共振が電流の形を変化させ、1次RMS電流を減少させたことがはっきりと分かります。2次共振を使用することで、トランスの1次巻線とQHの両方で導通損失が減少します。入力電圧がより低いときに効率向上が大きく、このとき1次電流は最大です。多くの場合、2次共振を実装すると、90VACで1%の効率向上が得られます。
適切に設計した場合、アクティブクランプフライバックを用いることで、驚くほどの効率と電力密度を実現できます。重要なのは、最適なマイナス電流で遷移モード動作を維持するコントローラを使用することです。
次にアクティブクランプフライバックを設計するときには、最適なFETを選択してスイッチノード容量を最小限に抑えることと、効率と熱特性の向上のために2次共振回路を追加することの重要性を思い出してください。
【著】Sarmad Abedin(Texas Instruments)
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