LEDの特性(2)LEDストリングの接続:DC-DCコンバーター活用講座(36)(3/4 ページ)
前回に引き続きLEDの特性に関して説明していきます。今回は、LEDストリングの接続について解説します。
並列ストリングにおけるLED電流のバランシング
もう1つの重要な問題は、複数のストリングに流れる電流のバランスです。2つ以上のLEDストリングの合成順方向電圧はそれぞれ異なります。LEDドライバは、各ストリングの合成順方向電圧を平均した電圧で、一定の電流を流します。この電圧はあるストリングにとっては高過ぎ、あるストリングにとっては低過ぎるので、電流が均等に分散されることはありません。
複数のストリングを流れるLED電流のアンバランス:
上に挙げた例では、電流のアンバランスはストリングを故障させるほどの過負荷状態ではないので、どちらのLEDストリングも十分な信頼性で動作します。しかし、2つのストリングの光出力には6%の差があります。
ストリングのアンバランス問題に対するソリューションは、1ストリングにつき1つのドライバを使用するか、特別な外部回路を追加して電流をバランスさせることです。これが電流ミラー回路です。
1つ目のNPNトランジスタはレファレンスの役割を果たし、2つ目のNPNトランジスタはこの電流を「ミラー」します。これにより、各ストリングに電流が自動的に等しく分散されます。1Ωのエミッタ抵抗は理論的には電流ミラーに必要ありませんが、実際にはトランジスタ間でVbeの違いをバランスさせる動作をし、電流バランスをより正確なものとします。
電流ミラーは、LEDの故障を防ぐ助けにもなります。1つ目のストリング内のいずれかのLEDに断線故障が発生した場合は、もう一方のストリングが保護されます(レファレンス電流がゼロなので、他のストリングの電流もゼロになる。また、いずれかのLEDに短絡故障が発生した場合でも、電流は均等にバランスされた状態に保たれます。
しかし、2つ目の回路のいずれかのLEDに断線故障が発生した場合は、1つ目のストリングのLEDがオーバードライブ状態になるのを電流ミラーによって防ぐことはできません。回路に変更を加えれば、この状況でもストリングを保護することは可能です。この場合は、最初のトランジスタにダミー負荷を使用して、残りのストリングの電流を設定します。
LEDドライバメーカーの中には、LEDが自動的に電流を均等に分担するので、このような外部電流ミラー回路は不要だとしているところもあります。しかし、これは正しくありません。複数のLEDストリングの合成順方向電圧が完全に同じでない限り、アンバランスは必ず生じます。
例えば2つの並列ストリングが共通のヒートシンクに取り付けられている場合に、一方のストリングに他方のストリングより多くの電流が流れると、そのストリングは他方より明るく、温度も高くなります。このためヒートシンクの温度が徐々に上昇して他方のストリングのVFが低下し、そのストリングはより多くの電流を流そうとします。理論的には、2つのストリングの電流は熱的な負帰還によってバランスするはずです。実際にこのような効果はあるのですが、正確なバランシングを保証できるほど十分なものではありません。
さらに、これら2つのストリングが実際には2個の分離したLEDランプである場合、熱的な補償帰還は得られません。合成VF値が最も低いランプに最も多くの電流が流れることで温度も最大となり、それによってさらにVFが低下します。これはアンバランスを助長させて、熱暴走やLEDの故障を招く恐れがあります。
図6の回路が初めて公表された時には、電流ミラーは理想的なソリューションではなく、1Ωの抵抗を加えるだけでも電流バランスは改善できるという反論がWeb上に上げられました。この主張はある程度正しいのですが、正確な電流バランスを必要とする場合は、各ランプに専用のドライバを使用する方法を除き、やはり電流ミラーが最もシンプルかつ最善の方法です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.