セラミックキャパシター(5) ―― 高誘電率系キャパシターの温度特性:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(49)(3/3 ページ)
高誘電率系のキャパシターの温度特性について説明します。この種のキャパシターの温度特性は数式で変化の様子を表すことができません。したがって図表や文章での説明が主体になります。
(参考)EIA規格によるクラスIIキャパシターの表示法
クラスIIのキャパシターは、IEC規格の調和規格であるJIS-5101-22:2014においても市場の要求として付属書C(参考)で紹介されています。
EIA-RS-198規格のクラスIIキャパシターの温度特性も3桁のコードを使用していますがJIS/IECのコードとは重複しないので混用することはないでしょう。記号の読み方は次の通りです。
- 最初の文字は低温側の動作温度を示す文字です。
- 2番目の数字は高温側の動作温度を示し、
- 最後の文字はその温度範囲における容量の変化を示します。
1桁目 | 2桁目 | 3桁目 | |
---|---|---|---|
低温側文字コード | 上限温度の数値コード | 温度範囲域での容量変化の文字コード | |
X=−55℃ | 2=+45℃ | P:±10% | |
Y=−30℃ | 4=+65℃ | R:±15% | |
Z=+10℃ | 5=+85℃ | S:±22% | |
6=+105℃ | T:+22/−33% | ||
7=+125℃ | U:+22/−56% | ||
8=+150℃ | V:+22/−82% | ||
9=+200℃ | |||
その他の容量変化幅はA=±1%、B=±1.5%、C=±2.2%、D=±3.3%、E=±4.7%、F=±7.5%があります。 またメーカーオプション記号もあるようです |
例えば、Z5Uのキャパシターは+10℃から+85℃の温度範囲で容量変化率は最大で+22%から−56%の容量変化となり、X7Rのキャパシターは−55℃から+125℃の温度範囲で最大±15%の容量変化になります。
一般的に使用されているクラスIIセラミックキャパシター材料のいくつかを以下に示します。
多くのケースでEIAからJIS/IEC品への置き換えは可能ですが全く同じというケースは少なく、多少の差異が存在します。しかし、この差異は設計時の配慮で吸収できるものと考えられます。
EIA呼称 | 下限温度(℃) | 上限温度(℃) | 変化幅(%) | JIS該当品&コメント |
---|---|---|---|---|
X5R | −55 | +85℃ | ±15 | 2B2(±10%)、2C2(±20%)、2R2(チップ) |
X7R | −55 | +125 | ±15 | 2R1 |
X8R | −55 | +150 | ±15 | 2R0(チップ) |
X6S | −55 | +105 | ±22 | 2C1(+125℃、±20%)、2C2(+85℃、±20%) |
X7S | −55 | +125 | ±22 | 2C1(±20%) |
Y5V | −30 | +85 | +22/−82 | 2F4(−25℃、+30/−80%) |
Z5U | +10 | +85 | +22/−56 | 2E6 |
EIA規格による温度特性測定手順
注)EIA規格には電圧印加モードはありません。
手順a | 手順b | 手順c | 手順d |
---|---|---|---|
Ta=25±2℃ | 適用下限温度±2℃ | Ta=25±2℃ | 適用上限温度±2℃ |
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
(次の記事を読む)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- セラミックキャパシター(4) ―― 温度特性
セラミックキャパシターの温度特性について説明をしていきます。なお、今回、取り上げる温度特性はIEC規格クラス1やその日本版であるJIS規格のクラス1です。 - セラミックキャパシター(2) ―― 誘電体とは
今回は、そもそもですが、誘電体とは何かについて説明します。 - アルミ電解コンデンサー(8)―― 市場不良と四級塩問題
今回は湿式アルミ電解コンデンサーの残った課題として四級塩*問題を取り上げたいと思います。四級塩問題については現象の説明だけの資料が多く、そのメカニズムについては納得できる技術資料がほとんどありません。本稿では筆者が納得しているメカニズムを1つの説として説明をしていきます。 - アルミ電解コンデンサー(7)―― 複数負荷モードでの寿命計算
今回は複数の負荷モードが繰り返される場合の機器の寿命をいくつかの負荷モードに区分して考えます。 - アルミ電解コンデンサー(6)―― ドライアップ寿命
電解コンデンサーを使いこなす上で避けて通れないドライアップ寿命、いわゆる寿命について説明します。寿命設計は正しく設計しないと数年後に市場でパンクや液漏れなどの不具合を招きます。 - アルミ電解コンデンサー(3)―― 化成処理と巻回
アルミ電解コンデンサーの主要部材であるアルミ箔。今回は、エッチングされた箔の表面に施す化成処理について詳しく説明していきます。