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セラミックキャパシター(7) ―― 使用上の注意点とディレーティング中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(51)(1/4 ページ)

今回はセラミックキャパシターシリーズのまとめとして、「使用上の注意点」や「ディレーティング」について説明します。

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 前回はセラミックキャパシターの新しい構造について説明しましたが、高周波になるとさまざまな因子が影響しますのでやはり適材適所の使用が重要です。
 振り返ればセラミックキャパシターも今回で7回目になります。今回は今までのまとめとして使用上の注意点やディレーティングについて説明したいと思います。

種類2特有の特性

経時変化(エージング現象)


図1:90度グレインの発生1)

 種類2(クラス2、あるいはクラスII)のセラミックキャパシター特有の現象の1つに時間とともに容量が減少するエージング現象があります。この種の誘電体はセラミックキャパシター(2)で説明したように分子構造がわずかに歪み、電荷分布が非対称になっています。このため分子が特定の方向にそろいやすくなり全体として自発分極と呼ばれる強誘電性を示す現象を発生させます。
 しかし、このわずかな歪みは周辺の分子から応力を受けることにもなります。ですので時間とともに分極粒界(グレイン)内で特定の方向にそろうことよりも、図1に示すように部分的に90度回転して応力を緩和しようとするようになります。この結果、誘電率が低下し容量減少に至ります。この減少の様子を図2(a)に示しますが対数時間とともに直線的に減少していくことが分かります。

 また、この現象は周囲からの応力によるものですので図2(b)に示すように、結晶をキュリー点以上に加熱し、徐冷、再結晶化することで容量を初期値にリセットすることができます。ただし、はんだ付け直後の容量変化はこの現象と異なり、一時的(数日間)な熱歪の影響ですので歪みが抜けるにつれて容量は復帰します。


図2:経時変化現象2)

 この減少の様子は実験的には次のような式で表すことができます。各定数の意味は次の通りです。

  κ:エージング定数(%/log(Hr))  C1:1時間経過後の容量
  T:経過時間(Hr)  CT:T時間経過後の容量

1式

 また1式を利用して2つの経過時間(T1、T2)と容量(CT1、CT2)からκを計算することができます。

式

ですから両式からκを求めると2式になります。

2式

 また既知のデーター(κ、T1、CT1)から任意の時間と容量(T2、CT2)を予測するには2式を変形した3式を使用します。

3式

 種類2のセラミックキャパシターを時定数回路などに使用する場合はこのような変化に対して設計マージンを見込んでおくことが必要になります。

 キャパシターの測定基準についてはIEC-384-9に定められており、静電容量の経時変化については最終熱処理から1000時間後の静電容量と定められています。メーカーによってはエージング率を加味して1000時間後の静電容量が容量公差範囲内に収まるように調整している場合があります。

圧電効果

 種類2に用いられる強誘電体はセラミックキャパシター(2)で紹介したように圧電材料の一種ですので弱いながらも圧電効果(電歪現象)を示します。このため、次のような現象を発生させる時があります。

  1. キャパシターに特定周波数の信号が印加されると、キャパシターの寸法で決まる物理的固有共振周波数に共振してノイズや音が発生することがあります。
  2. キャパシターに振動や衝撃を加えると、機械的応力が圧電効果によって電気信号に変換され、ノイズが発生する時があります(オーディオアンプ部付近)。
  • 対策としては、寸法や寸法比を変えて共振周波数を変える方法が良く用いられます。また、可能なら圧電現象のない種類1のキャパシターヘ変更する方法も検討します。
    その他にはプリント配線板などの共振を抑えるためキャパシターの取付け方向や支点を変える、あるいはリードタイプでは接着剤でプリント配線板とキャパシターを固定する方法も有効な場合があります。

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