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非絶縁フライバックの代替としての上下反転型降圧トポロジーの働き電源設計のヒント

上下反転型降圧トポロジーについて解説します。

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 電源として一般的なものの中に、AC商用電源とも呼ばれるオフライン電源があります。標準的な家庭用の機能を組み込むことを目指す製品が増えているため、必要な出力能力が1W未満である低電力オフライン・コンバーターの需要が高まっています。これらのアプリケーションを設計する上で最も重要なのは、効率、統合、そして低コストです。

 トポロジーを決定するとき、一般に低電力オフライン・コンバーターの候補として最初に挙がるのがフライバックです。ただし、絶縁が不要な部分には、これがベストな方法とは限りません。例えば、ユーザーがスマートフォンのアプリから操作するスマート照明スイッチが最終製品だとします。この場合、ユーザーが操作中に露出した電圧と接することはあり得ないため、絶縁は必要ありません。

 オフライン電源の場合、パワーステージ部品が数個しかなく部品表(BOM)コストが低いことと、広い入力電圧範囲を扱えるようにトランスを設計できることから、フライバック・トポロジーは妥当なソリューションです。しかし、設計の最終アプリケーションに絶縁が不要な場合はどうでしょうか。このような場合でも、入力がオフラインということを考えて、設計者はフライバックを使いたいと思うかもしれません。コントローラーにFETと1次側レギュレーションが内蔵されれば、小型のフライバック・ソリューションになり得ます。

 図1は、Texas Instruments(TI)の1次側レギュレーション付きフライバック・スイッチャ「UCC28910」を使用した非絶縁型フライバック回路の例です。これは実現可能な回路ではあるものの、上下反転型オフライン降圧トポロジーの方が、フライバックに比べて効率が高く、BOM数も少なくなります。本記事では、低電力AC-DC変換での上下反転型降圧トポロジーの利点を詳しく見ていきたいと思います。


図1:フライバック・スイッチャを使用した非絶縁フライバック設計の例。ここではTexas Instruments(TI)の「UCC28910」を使用している

 図2は、上下反転型降圧のパワーステージです。フライバックと同様に、スイッチング部品が2つ、磁気部品が1つ(トランスの代わりにパワーインダクターが1つ)、コンデンサーが2つあります。


図2:上下反転型降圧電源段の概略回路図

 上下反転型降圧トポロジーは、その名前が示すように、降圧コンバーターと似ています。スイッチが、入力電圧とグランドの間でスイッチング波形を生成し、この波形がインダクター/コンデンサーネットワークによりフィルタリング出力されます。異なる点は、出力電圧が入力電圧より低い電位としてレギュレートされることです。出力は入力電圧未満で「フローティング」状態ですが、通常通り下流の電子部品に電源供給できます。

 ローサイドにFETがあることで、フライバック・コントローラーから直接駆動できます。図3は、UCC28910を使用した上下反転型降圧です。磁気スイッチング部品には、1対1の結合インダクターが使われます。1次巻線は、電源段のインダクターの役割を果たします。2次巻線は、タイミングと出力電圧レギュレーション情報をコントローラーに提供し、コントローラーのローカル・バイアス電源電圧(VDD)コンデンサーを充電します。


図3:UCC28910を使用した上下反転型降圧設計の例

 フライバック・トポロジーの難点は、トランスを越えてエネルギーを伝える方法です。この降圧トポロジーでは、FETのオン時間中に空隙にエネルギーを蓄積し、FETのオフ時間中に2次側にエネルギーを伝えます。実際のトランスでは、1次側にある程度のリーク・インダクタンスがあります。エネルギーを2次側に移動させるときに、残ったエネルギーはリーク・インダクタンスに蓄積されます。このエネルギーは利用できないものなので、ツェナーダイオードか抵抗/コンデンサーネットワークを使って消費しなければなりません。

 降圧トポロジーの場合、リーク・エネルギーは、FETのオフ時間中にダイオードD2を通して出力に供給されます。このため、部品数が削減され、効率も向上します。

 もう1つの違いは、磁気部品それぞれの設計と導通損失です。上下反転型降圧には電力を伝えるための巻線が1つしかないため、電源供給のための全ての電流がこの巻線を流れることで、良好な巻線利用率が得られます。

 フライバックの巻線利用率は、ここまで良好ではありません。FETがオンのときは、電流は1次巻線を流れますが、2次側には流れません。FETがオフのときは、電流は2次巻線を流れますが、1次側には流れません。結果として、トランスに蓄積されるエネルギーは大きくなり、フライバック設計では同じ量の出力電力を供給するためにより多く巻線が使われます。

 図4に、降圧のインダクターと、フライバック・トランスの1次および2次巻線の電流波形の比較を示します。入力と出力の仕様は同じです。左側の青い四角の中は降圧インダクターの波形、右側の2つの赤い四角の中がフライバックの1次巻線と2次巻線です。それぞれの波形について、2乗平均平方根電流に巻線の抵抗を乗算し、導通損失を算出します。降圧には巻線が1つしかないため、磁気部品の総導通損失は、1つの巻線による損失です。しかし、フライバックの総導通損失は、1次巻線の損失と2次巻線の損失を足したものになります。さらに、電力が同程度だと、上下反転型降圧設計に比べてフライバックでは磁気部品が物理的に大きくなります。どちらの部品もエネルギー蓄積量は、1/2 L × IPK2と等しくなります。


図4:降圧トポロジーとフライバック・トポロジーの電流波形の比較

 ここに示す波形では、上下反転型降圧で蓄積が必要な電力は、フライバックで必要になる蓄積電力の4分の1で済むと計算されます。結果として、上下反転型降圧設計は、同程度の電力のフライバック設計に比べて、フットプリントがかなり小さくなるでしょう。

 絶縁が不要な場合、いつもフライバック・トポロジーが低電力オフラインアプリケーションのベストなソリューションとは限りません。上下反転型降圧は、使用するトランスやインダクターをより小さいものにできる可能性があるので、BOMコストを下げながら効率を向上することが可能になります。パワーエレクトロニクスの設計者にとって重要なのは、考えられるトポロジーソリューションを全て検討して、目的の仕様に最も合うものを判断することです。

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