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低消費電力モードからの復帰方法Q&Aで学ぶマイコン講座(63)(2/3 ページ)

マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、中級者の方からよく質問される「低消費電力モードからの復帰方法」についてです。

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 本記事では、「STM32L4シリーズ」を例にして、解説します。

低消費電力モードの2つの手法

 2016年7月「Q&Aで学ぶマイコン講座(28)いろいろなマイコンの低消費電力モードを理解する」でも述べましたが、マイコンの消費電力を小さくする手法は、大きく分けて「動作速度を落として消費電力を小さくする方法」と「必要な機能のみ動作させ、不要な機能を停止/電源切断する方法」の2つです。ここで「停止」とは、機能ブロックへのクロック供給を止めることによって低消費電力を実現することを指します。「電源切断」は、電源供給を止めることを指します。

 「動作速度を落として消費電力を小さくする」場合、マイコンの各機能は低速ながらも動作しています(ただし、A-Dコンバーターのように低速動作が制限される機能は除く)。従って、低消費電力モードに遷移する前の動作状態(レジスタやRAMの内容など)を保持しているため、遷移前の状態に復帰する際にレジスタなどの再設定は必要ありません。(例: 低電力ランモードからランモードへの復帰など)

 ユーザーが注意しなければならないのは、「必要な機能だけ動作させ、不要な機能を停止/電源切断する」場合からの復帰です。

 クロックを停止しているモードから復帰する場合、クロックを復活させる必要があります。電源切断のモードからの復帰は、パワーオンリセットと同じ状態になるため、各周辺機能のレジスタなどの再設定が必要です。

 例えば、スタンバイモードからランモードへの復帰の場合は次のようになります。スタンバイモードでは、バックアップ用電源エリアの回路以外の内部回路の電源供給が停止するため、レジスタやRAMの一部の内容は失われます。復帰の際には、消失されたレジスタやRAMの内容を再設定する必要があります。

内蔵電圧レギュレーター

 先述した「バックアップ用電源エリアの回路以外の内部回路の電源供給が停止」について、もう少し詳しく解説します。

 STM32L4シリーズには、バックアップ用電源エリアの回路とアナログ回路以外の内部デジタル回路に電源を供給する電圧レギュレーターが内蔵されています(図1)。マイコンの内部デジタル回路のほとんどは、電圧レギュレーターから電源が供給されています。低消費電力モードに入って電源を切断する場合は、この電圧レギュレーターからの電源が遮断されます。


図1:内蔵電圧レギュレーター
「STM32L4x5 and STM32L4x6 」のリファレンスマニュアルRM0351から抜粋

 電圧レギュレーターには、メイン電圧レギュレーター(以下、MR:Main Regulator)と低電力レギュレーター(以下、LPR:Low Power Regulator)の2つがあります。

 MRはランモードなどの通常動作時に使用され、LPRは低消費電力モードで使用されます。LPRは電源供給能力が低く、自身の消費電力も小さい電圧レギュレーターです。マイコンが低電力モードに入った時に使用するために設けられたもので、レジスタやRAMの内容を保持するのが主な目的です。

 低消費電力モードに入った場合に、どちらの電圧レギュレーターから電源が供給されているか、または遮断されているかによって、復帰する際の再設定の手順が変わります。

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