オシロスコープが届いたら最初にすること:初めて使うオシロスコープ(1)(6/6 ページ)
今回の連載記事は、オシロスコープの世界的なトップメーカーであるテクトロニクスの協力を得て、初めてオシロスコープを使う人を対象にエントリーモデルの「TBS2000B(2chモデル)」を事例にして基本的な使い方や使用上の注意点を解説していく。
装置組み込みでオシロスコープを利用する場合
オシロスコープ単体として実験室で使うことは多いが、装置に組み込んで波形のモニターなどに使われることもある。装置の内部や組み込んだ信号源から波形を取り出して画面に表示したときは、標準添付のプローブを使うのではなく、信号伝送系を50Ωインピーダンスとしてオシロスコープの入力に貫通型50Ω終端器を取り付けるのが一般的である。貫通型50Ω終端器を使う場合は、終端器で消費される最大電力を超えないようにしなければならない。映像系の信号では75Ωインピーダンス系とする場合がある。
【ミニ解説】デジタルオシロスコープの選定のキーワード
デジタルオシロスコープには多くの仕様項目があり、波形観測の目的にあっている仕様であるかを確認する必要がある。基本となる仕様は下記の4つである。
- アナログ信号の周波数帯域
- アナログ信号の入力数
- A-D変換器の分解能
- 波形メモリ長
その中でも最も重要なのが、周波数帯域になる。技術者が利用するオシロスコープはおおよそ下記の分類がされる。一般に周波数帯域は広くなるに従ってオシロスコープは高額となる。
- 500MHz以下
電子機器からメーカートロニクス機器まで幅広い用途がある。エントリーモデルはこの分類となる。 - 500M〜2GHz
一般のデジタル回路基板のアナログ波形を観測するのに使われる - 2G〜8GHz
高速デジタル回路基板や汎用シリアル通信のアナログ波形を観測するのに使われる - 8GHz以上
超高速のデジタル回路基板や高速シリアル通信のアナログ波形の観測に使われる
先端的な研究開発では20GHz帯域以上のオシロスコープが使われている
注)テクトロニクスの製品名称の下に製品ラインアップが持つ周波数帯域の範囲を示す。
広帯域のオシロスコープは静電気などにより破損するリスクがあるので、取り扱いには高周波機器を取り扱う知識と経験が必要となる。
一般の波形観測ではA-D変換器の分解能は8ビットでよいが、波形画像を縦軸方向に拡大しての観測や、FFT演算によって高ダイナミックレンジの周波数分析をしたい場合は、12ビットの分解能のオシロスコープを選択することになる。
一般的な用途では、2chもしくは4chのアナログ入力のオシロスコープが使われている。組み込み基板などを評価する際には、同時に多くのポイントの波形を観測しなければならない場合があるため、最近では8chのオシロスコープが各社から登場している。複数台数のオシロスコープを連結して同期を取ることによって8ch以上の波形を同時に観測することができる製品もある。
また、デジタル基板の評価ではデジタル信号を論理信号として複数同時に読み込む要求がある。従来はロジックアナライザーとオシロスコープを組み合わせて使っていたが、現在はアナログ信号とデジタル信号を同時に観測できるミックスドシグナルオシロスコープが使われている。
転載元「TechEyesOnline」紹介
TechEyesOnlineは、測定器を中心にした製品情報や技術情報を提供する計測器専門の情報サイト。測定器の基礎・原理、測定セミナーから、市場動向・展示会・インタビュー記事までオリジナルコンテンツを豊富に掲載しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- デジタルオシロスコープの歴史や種類
電子回路技術者にとって日々使う道具である「オシロスコープ」。原型は19世紀末に登場しており、その後のエレクトロニクス技術の進化によって高性能化や高機能化が進んだ。現在では、単なる現象の変化を波形として目視で観測するための測定器から、取り込んだ波形データを加工してさまざまな測定値を得ることができる複合測定器となってきている。今回の連載では、オシロスコープとプローブについて歴史、製品の種類、機種選定のポイント、製品の内部構造、製品仕様、トリガ機能、演算機能、プローブ、校正についての基礎知識を紹介していく。 - デジタルオシロスコープの基本仕様やトリガー機能
連載2回目の今回は、オシロスコープの「基本仕様の理解」「トリガー機能」「パラメーター測定および演算機能」「波形データの印字、保存、通信」について解説する。 - 多チャンネルのオシロスコープ特集〜大手5社の8chモデル紹介〜
今回はオシロスコープの最新動向として主要メーカー5社の8chモデルの概要を紹介する。 - スペクトラムアナライザーの概要と種類
今回は、無線通信機などの高周波を取り扱う機器の開発、生産、保守の現場では必須の測定器、スペクトラムアナライザーについて解説を行う。 - 直流電子負荷装置の用途と安心して使うためのポイント
直流電子負荷装置の用途を具体的な利用事例を示しながら解説するとともに、直流電子負荷装置を安心して使うためのポイントを紹介する。 - さまざまな時間測定器やユニバーサルカウンターの測定項目
ユニバーサルカウンターについて解説する第1回。今回は、「カウンターが普及するまでに使われていた時間測定器」「カウンターが登場して以降の主な時間測定器」「ユニバーサルカウンターの主な測定項目」について説明する。