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SiCパワーMOSFETのスイッチング特性、大電流/高電圧領域の測定で解析精度が向上:SiC採用のための電源回路シミュレーション(2)(3/4 ページ)
SiCパワーMOSFETのデバイスモデルの精度向上には、「大電流/高電圧領域のId-Vd特性」および「オン抵抗の温度依存性」を考慮しデバイスモデルに反映させることも重要となる。今回はこの2点に関する解説を行う。
スイッチング波形を高精度に解析
実際に、PD1500Aを使ってSiCパワーMOSFETのドレイン電圧が高い領域のId-Vd特性を測定した結果が図2である。測定結果が得られれば、これを使ってSiCパワーMOSFETのデバイスモデルのパラメータを最適化することができる(図4)
図4:大電流・高電圧のId-Vd特性を使ってパラメータを調整
大電流/高電圧領域のId-Vd特性を測定できるようになったため、その結果を用いてデバイスモデルのパラメータを最適化することが可能になった。このためデバイスモデルの精度が格段に向上した。[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー
このデバイスモデルを適用した回路シミュレーションで求めたスイッチング軌跡が図5である。いままでは、スイッチング軌跡の測定結果とシミュレーション結果にかなり大きな乖離があったが、図5では両者がほぼ一致する結果が得られた。SiCパワーMOSFETのデバイスモデルの精度が大幅に向上したといえるだろう。
図5:スイッチング軌跡の測定結果とシミュレーション結果が一致
大電流/高電圧領域のId-Vd特性の測定結果を使ってデバイスモデルを最適化したため、スイッチング軌跡の測定結果とシミュレーション結果が一致するようになった。[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー
次に、このデバイスモデルを使ってSiCパワーMOSFETを採用した電源回路のスイッチング特性を解析した(図6)。スイッチング時の電圧波形と電流波形のどちらも、立ち上がり/立ち下がりのタイミングや、波形の傾きなどが測定値とほぼ一致している。この結果であれば、電力損失をかなり正確に見積もることができ、変換効率を高い精度で計算できるようになる。これだけ高い解析精度が得られれば、SiCパワーMOSFETを採用した電源回路の設計に回路シミュレーションを有効活用できるだろう。
図6:スイッチング波形のシミュレーション値と測定値も一致
大電流/高電圧領域のId-Vd特性の測定結果を使ってデバイスモデルを最適化したため、スイッチング波形の測定結果とシミュレーション結果も合うようになった。これでシミュレーションの段階で、電力損失や変換効率を正確に見積もれる。[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー
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