危ない! 火花を散らす半導体製造装置の高圧電源を修理【前編】:Wired, Weird(2/2 ページ)
半導体製造装置の高圧電源の修理を依頼された。不具合内容は『電源投入後にブレーカーから火花が出て電源が落ちる』ということだった。半導体製造装置では、かなり危ない不具合だ。今回はこの危ない高圧電源の修理の様子を紹介する。
試しに10Ω5W程度のNTCサーミスタを使ってみると……
手持ち部品に相当品がなかったので、10Ω5W程度のNTCサーミスタを試しにつないでみたが、電源投入時に見事に破裂した。破損した部品を図5に示す。
図5は断線した突入電流防止抵抗の代わりに入れてみたNTCサーミスタだ。通電と同時に『バン』と大きな音が出てNTCサーミスタが破裂した。
電解コンデンサーに充電された電圧を220Ω10Wの抵抗で放電させた。この放電時にも火花が出た。使用されていた電解コンデンサーはかなりの大容量だ。電解コンデンサーを放電させた後にテスターで容量を測定した。図6、図7に示す。
図6は実装された電解コンデンサーで並列接続されていた。図7のようにテスターで測定すると容量は1万2270μFだった。こんな大きな容量では三相電源のAC200Vを直接接続したら200Aを超える突入電流が発生するだろう。
半導体製造装置であってはならない火花がなぜ?
今まで10年間にいろいろな電源機器を修理しているが突入電流防止抵抗が断線しているのを見たのは初めてだった。しかも25Ω25Wのホーロー抵抗の断線だったのでとても驚いた。なぜ、この電流制限抵抗が断線したのだろうか。突入電流を繰り返しても断線することはないだろう。おそらく、高圧電源の出力中に何らかの原因でリレー接点がオープンになり突入電流防止抵抗を通して連続で大電流が流れたため突入電流防止抵抗が過熱して断線したと想定される。代替の抵抗に25Ω25Wのより少し大きい抵抗値でサイズも少し大きめの35Ω30Wのホーロー抵抗を手配した。
火花が出ていたことで、パワーリレーやブレーカーにもダメージがあった。この症状では断線した抵抗やパワーリレーを交換しても、根本原因を直さないと何らかの原因で抵抗が切れればまた火花が発生する。もし設計ミスでこのような回路を設計したとすれば重大な問題だ。引火性ガスや有機溶剤を使用する半導体製造装置では、火花を出すことは特にあってはならないことだ。
海外製の装置でもあり修理時には回路図がないので回路不良か、設計ミスかは判断できない。しかし抵抗を変えただけではまた危険な火花が発生する不具合が再発するだろう。突入電流防止回路を変更して、確実に火花が発生しない回路へ変える必要があった。続きは次回に詳細に報告する。
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