連載
電磁気学入門(6)コアレス〜近接効果:DC-DCコンバーター活用講座(49)(2/2 ページ)
電磁気学入門講座。今回は、表皮効果の別の結果である近接効果について説明します。
近接効果による損失の計算は、1966年にP.L.Dowellが、周波数と層数に対するRac/Rdc曲線(図4)を導出するため、インダクターの層に関するマクスウェル方程式を解くための論説を書いた時に解決しました。彼の数学的解は改善がなされてきましたが、その本質部分は最初の有効な近似式として残っています。
120kHzで動作している一般的なDC-DCコンバーター(上図の青色線)では、近接効果は4層巻き線でAC抵抗をDC抵抗の30倍に増加させます。通常、多層巻き線では、近接効果による損失が表皮効果の損失を上回るのが容易に理解できます。
トランスでの近接効果による電流集中は、巻き線を挟み込むことで低減可能です。単純な1:1、電流1A、一次側および二次側ともに2層のトランスを例に取ります。二次巻き線が単純に一次巻き線の上に巻かれた(一次−一次−二次−二次)場合、式11は、一次巻き線の最も外側の層と二次巻き線の最も内側の層に流れるピーク電流は、3Aになることを示しています。しかしながら、巻き線を一次−二次−二次−一次のようにした場合、巻き線間の近接効果は除去されるので、ピーク電流は公称電流である1Aになります。
図5は、それを図式にしたものです。
⇒「DC-DCコンバーター活用講座」連載バックナンバーはこちら
※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電磁気学入門(5)コアレス〜表皮効果
電磁気学入門講座。今回は銅巻き線を流れる電流の表皮効果について説明します。 - 電磁気学入門(4)コアレス〜相互インダクタンス損失と渦電流損失
電磁気学入門講座。今回は「相互インダクタンス損失」と「渦電流損失」について説明していきます。 - 電磁気学入門(3)エアギャップインダクターとコア形状
今回は、コアの飽和を制御する方法として、コアにエアギャップを設ける「エアギャップインダクター」や、標準的な「コア形状」について解説します。 - 電磁気学入門(2)コアの飽和
電磁気学入門講座。今回は、「コアの飽和」について説明していきます。 - 電磁気学入門(1)基礎〜磁界強度と磁束密度
今回から「電磁気学入門」として基礎から解説していきます。 - DC-DCアプリケーションの考え方(4)CTRLピンやVADJピンの使い方
引き続き、DC-DCコンバーターのあまり一般的でない使用方法について検討します。今回はCTRLピンやVADJピンの使い方に関して解説します。