Wi-Fi 6Eの登場で、干渉テストはどう変わる?:6GHz帯を使用する最新規格(2/2 ページ)
携帯電話の規格と同様に、Wi-Fiの規格も進化を続けており、Wi-Fi 6Eはその中でも新しい規格となります。6GHz帯を使用する同規格の登場で、干渉テストはどう変わるのでしょうか。
適応性(Adaptivity)/CAM(Channel Access Mechanism)テスト
適応性/CAMテストは、FCC CBPテストに相当するETSIのテストですが、より複雑です。listen-before-talk(LBT)デバイスがデータ転送する前にチャネルを確認するために使用する自動メカニズムに焦点を合てています。この規格では、利用できるチャネルを公正に使用するために、他のデバイスがチャネルを使用する確率を確認することも要求しています。
CAMテストは、結果の計算に大規模なデータ処理を必要とするため、複雑で時間がかかります。他のデバイスが対象のチャネルを使用する確率を定量化するには、最小アイドル時間を最大チャネル占有時間(channel occupancy time:COT)で割る必要がありますが、これはデバイスクラスによって異なります。COT測定では多くのサンプルが必要になります。例えば、ロードベースのデバイス(LBE)は、1マイクロ秒以下の分解能で1万以上のサンプルを必要とする場合があり、結果として多くのデータポイントの測定と収集をすることになります。
適応性テストには、デバイスにさまざまな信号を注入して干渉解析を行い、これらの信号を検出し応答する能力を評価することも含まれます。このテストでは、5Gユーザーからの干渉をシミュレートするために、5G NR波形を必要とします。また、既知の信号レベルと帯域幅が必要であり、事前に実施された占有チャネル帯域幅(occupied channel bandwidth:OCB)テストの結果を適用する必要があります。
レシーバー選択性(Receiver selectivity)テスト
以前はレシーバー隣接チャネル選択性テストとして知られていたレシーバー選択性は、干渉に関連する別の新しいETSIテストです。このテストは、干渉信号が隣接チャネルにあるために、劣化が特定のレベルを超えることなく、そのチャネルで対象信号を受信するデバイスの能力を測定します。
テストは主に3つのステップで構成されています。最初のステップは、10%未満のパケットエラーレート(PER)でデバイスに対する信号のパワー最小値(Pmin)を決定することです。次のステップは、上位チャネル(20MHzと40MHzより上)の干渉を追加し、デバイスのPERが10%以下であることを確認することです。最後のステップは、下位のチャネル(20MHzと40MHzより下)に干渉を加え、再びPERを確認することです。
図2は、レシーバー選択性テストのセットアップを示しています。これにはパッシブコンポーネントが含まれており、シールドルームかファラデーケージが必要な場合があります。Pmin値を求め、PERを決定するためには、可変アッテネータとパケット測定システムも必要になります。信号調整コンポーネントとパケットカウンターを使用すれば、いくつかのフロントパネルに接続を必要とするだけで、テストがより管理しやすくなります。
図2:キーサイト・テクノロジーの「X8749A」信号調整テストセットとパケットカウンターを使用した、レシーバー選択性テストのセットアップ[クリックで拡大] 出所:Keysight Technologies
デュアル・クライアント・テスト
デュアル・クライアント・テストも、FCCによる新しいテストです。クライアントデバイスは、標準出力のアクセスポイント、低出力の屋内アクセスポイント、あるいはその両方に接続できるため、FCCは、クライアントデバイスが両タイプのアクセスポイントに接続できる柔軟性を備え、2つのアクセスポイントをシームレスに切り替えられることを検証するためにこのテストを要求しています。デュアル・クライアント・テストは、これらのクライアントデバイスが、異なるアクセスポイント構成を区別し、それぞれの出力レベルを制御できることを確認します。
図3は、接続されたデュアル・クライアント・テストのセットアップを示しています。このテストには、低出力と標準出力のアクセスポイント、可変アッテネータおよび、信号調整コンポーネントが必要になります。
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