LE Audio対応補聴器の要件を満たした新機能:LE Audio概説―補聴器の活用例【後編】(1/3 ページ)
前編で説明した通り、トポロジーと接続の要件定義ができたところで、それらに対応するために多数の新機能をコア仕様に追加する必要があることは明らかです。今回は、それらに対応するための要件をコア仕様の中でどのように満たしたのか、さらに追加された新機能がどのように消費者向けのアプリケーションに応用されるに至ったのか解説します。
前回の記事の通り、トポロジーと接続の要件定義ができたところで、それらに対応するために多数の新機能をコア仕様に追加する必要があることは明らかです。そこで、補聴器の要件をコア仕様の中でどのように満たすべきかという、2つ目の壁に行き当たります。
補聴器の活用例に対応するためのコア要件
まずはBluetooth LEに新しいオーディオストリーミング機能を導入するのではなく、Bluetoothの既存のオーディオ仕様を拡張することで新機能に対応できないかが分析されました。それができれば、現行のオーディオプロファイルとの後方互換性も提供できるはずです。最終的には、あまりにも多くの妥協点が必要になるため、むしろコア仕様4.1のLow Energy仕様の上に「白紙の状態」から設計する方がよいと、Bluetooth LEが最初に開発されたときの分析と同様の結論に達しました。
アイソクロナスチャネルの導入
コア仕様に対し、既存のACLチャネルと並行してBluetooth LEでオーディオストリームを伝送する「アイソクロナスチャネル(Isochronous Channel)」という新しい機能の導入が提案されました。ACLチャネルはストリームの構成設定、セットアップ、制御に使用され、音量、電話、メディア制御などのより汎用的な制御情報の伝送にも使用されます。アイソクロナスチャネルでは一方向または二方向のオーディオストリームが実現できるほか、複数のデバイス間で複数のアイソクロナスチャネルをセットアップもできます。Bluetooth LE Audioではこのようにオーディオのデータプレーンとコントロールプレーンを分離することで柔軟性を大きく高めています。
周波数ホッピング方式の改良
オーディオ接続は堅牢であることが重要です。つまり、伝送の一部が干渉の影響を受ける可能性に対応するため、複数の再送信ができなければなりません。ユニキャストストリームの場合はACK/KNACKの確認応答のスキームがあり、送信側でデータ受信が確認できたら再送信を止められます。ブロードキャストの場合はフィードバックがないため、送信側は無条件にオーディオパケットの再送信を続けなければなりません。堅牢性に関する調査の中で、LEデバイスを干渉から守る周波数ホッピング方式が改良できることが明らかになり、それも要件として付け加えられました。
ブロードキャストのための「EA」と「PA」
ブロードキャストでは、特にデバイスが接続なしでどのようにブロードキャストを見つけられるかについて、いくつか新しいコンセプトが必要でした。Bluetooth LEでは、デバイスが自分の存在を発信するときにアドバタイズを行います。接続しようとするデバイスはこのようなアドバタイズをスキャンして探し、発見したデバイスに接続して、そのデバイスが何に対応しているか、どのように接続すればよいのかという詳細情報を得ます。詳細情報には、そのデバイスがデータを送信するタイミング、そのホッピングシーケンス、それが何をするのかが含まれます。
Bluetooth LE Audioの要件では、Bluetooth LEの通常のアドバタイズに入れられる以上の情報が必要になります。この制約を乗り越えるため、コアにEA(Extended Advertisements)とPA(Periodic Advertising trains)という新しい機能を追加し、通常はアドバタイズに使用されない汎用的なデータチャネルのデータパケットでこの情報を伝送できるようにしています。これに伴い、受信デバイスでこの情報を使用してブロードキャストオーディオストリームがどこにあるかを特定し同期するための新しいプロシージャも追加されました。
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