48V対12V
48Vのサーバ電源をめぐっては、さまざまな議論や実験が行われてきました。これまでは、ほとんどのコンピュータやサーバプラットフォームの内部電源で、12Vが使われてきました。これは、旧来のシリコン技術に加え、不揮発性ストレージ用のHDD、冷却ファンなど、コンピュータプラットフォームの構成要素に起因するレガシー要件でもあります。CPUの消費電力はプロセッサの世代を重ねるごとに飛躍的に増加しており、CPUの電流負荷が高いため、12V時の入力電流も大きくなっています。
この高電流要件により、12Vを配電するためのケーブルやバスバーを太くする必要があり、12V電流が大きくなると配電損失が増えます。こうした電力損失は熱を発生させるため、デバイスの寿命が短くなったり、システムの脆弱性が生まれたりするなど、高密度コンピューティングにとっては障壁になってしまいます。
この電力損失対策の一つが、48Vラック電源をサーバ本体に取り込み、48V専用電源コンバーターを導入することです。
導通電力損失 = (負荷電流2)×(導通経路の抵抗)
48V電源は、同じ電力を4分の1の電流で負荷に供給できるため、導通経路での電力損失を16分の1に抑えることができます。
このように、システムの効率を大幅に改善するには、いくつかの課題があります。12V電源ソリューションは、何世代にもわたって最適化を重ねていて、極めて効率的です。一方、高電圧電源では、CPUコア電圧に達するのに大きな降圧が必要で、電力変換ステージの効率が低下する可能性があります。また、より高電圧のシリコン技術が必要となり、MOSFETアーキテクチャでは単位面積当たりの抵抗が高くなる傾向があるため、システムコストの上昇にもつながるでしょう。
このようなシステム上の課題がイノベーションの源泉となっており、試験的に先進アーキテクチャの実装が行われています。最も期待されている新しい電力変換技術の一つが、図2に示すSTC(Switched Tank Capacitor)コンバーターです。これらのコンバーターは非常に高い効率を達成し、ほとんどの場合、回路面積がより小さくなります。設計者やシステム全体のアーキテクチャに応じて、シングルステージ変換とマルチステージ変換の両方のソリューションとも成功が実証されています。
具体的な中間電圧はシリコンベンダーによって異なり、通常は特定の技術要件に基づいて選択されます。最も効率的で広く選択されている総合ソリューションは、48Vから12V、12Vから1VでCPUコアに電力を供給してきました。このアプローチでは、両方の成熟したソリューションを活用し、実質的な降圧電圧を調整してシステム全体の効率を最大化します(図3)。
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