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マイコンの周辺部品の選び方(発振子編) Q&Aで学ぶマイコン講座(74)(1/3 ページ)

マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、初心者の方からよく質問される「マイコンの周辺部品の選び方(発振子編)」についてです。

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 素朴な疑問から技術トラブルなどマイコンユーザーのあらゆる悩みに対し、マイコンメーカーのエンジニアが回答していく連載「Q&Aで学ぶマイコン講座」。

 今回は、初心者から多く寄せられる質問です。

 マイコンには、発振回路がメインとサブで2つ搭載されています。1つの発振回路で発振したクロックを分周したり、逓倍(ていばい)したりすれば1つで十分だと思いますが、なぜ2つの発振回路が搭載されているのですか?

 さらに、2つの発振回路は、それぞれ異なる電気的特性がデータシートに記載されています。これらの電気的特性と発振子(振動子と呼ばれる場合もある)の特性と、どのように照らし合わせて発振子を選べば良いのでしょうか?

 例として、図1にSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)の汎用32ビットマイコン「STM32L476」*1)の発振回路の電気的特性を示します。


図1:マイコンに搭載されている発振回路の電気的特性[クリックで拡大]
STM32L476xxのデータシートのTable57とTable58から抜粋

 まず、マイコンの発振回路の消費電流に着目してください。メイン発振回路の消費電流は、最小値が0.44mAです。一方、サブ発振回路の消費電流は最小値が250nAで、はるかに小さいです。メイン発振回路で生成されるクロックをサブ発振回路の周波数まで分周しても、周波数的には問題ないのですが、消費電流は大きくなり、電池駆動などでは、電池寿命が短くなってしまいます。そのため、時計モードなどでメイン発振回路が必要とされない場合は、メイン発振回路を止めてサブ発振回路だけで動作させるといった使い分けをします。

 このように、メイン発振回路とサブ発振回路の2つ以上の発振回路を設けることで、総合的な消費電流を最適化しています。

 また、水晶発振子やセラミック発振子の電気的特性に等価直列抵抗(以下、ESR:Equivalent Series Resistance)があります。この特性は、電流を通しづらくする抵抗の働きをします。一方、マイコンの発振回路にはトランスコンダクタンス(Transconductance)という特性があります(Gmまたはgm)。Gmは、発振子を駆動する能力を表すパラメータです。厳密には、基板の寄生抵抗なども考慮しなければなりませんが、少なくとも発振子のESRがGmで示される駆動能力を超えると、発振子の駆動不足になり、発振が不安定になります。従って、発振子を選択する時はマイコンのGmをチェックし、それに見合ったESRの発振子を選択する必要があります。

*1)https://www.stmcu.jp/stm32/stm32l4/

(参考記事):Q&Aで学ぶマイコン講座(2):水晶やセラミック発振子を使った発振回路の設計方法は?

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