急成長するSiCとGaNパワー半導体、その現状を知る:最新の開発動向や、用途/製造面の違い(1/2 ページ)
急激な成長を遂げるSiC(炭化ケイ素)およびGaN(窒化ガリウム)パワー半導体について、基本的な設計技術や製造方法、ターゲット用途などの現状を説明する。
SiC(炭化ケイ素)およびGaN(窒化ガリウム)パワー半導体の製品化は進み、市場シェアを急速に拡大しているところだ。フランスの市場調査会社Yole Groupによると、SiCおよびGaNデバイスは2027年末までに、パワー半導体市場全体の30%のシェアを獲得し、シリコンMOSFETやIGBTを置き換えていくという。急激な成長を遂げるこれらのWBG(ワイドバンドギャップ)半導体について、基本的な設計技術や製造方法、ターゲット用途などの現状を、正確に把握する必要があるだろう。
SiC、GaN、シリコンのすみ分け
Navitas Semiconductor(以下、Navitas)のコーポレートマーケティング部門担当バイスプレジデントを務めるStephen Oliver氏は、「現在、主に生産面ではSiCがGaNの10年以上先を進んでいる状況にある。つまり、電源設計のエンジニアたちは、比較的SiCの方に精通しているといえる」と述べている。
Oliver氏は、「大半のSiCデバイスは、3ピンパッケージで提供されるため、高電力/高電圧アプリケーション向けとして非常に適している。その結果、風力タービンや太陽光インバーター、鉄道、トラック、バスなどで広く使われるようになった。一方、GaNは定格電圧650Vや700V級のデバイスとして、20Wの携帯電話機用充電器から20kWの電力供給アプリケーションまで幅広く対応できる。この範囲を超える場合はSiCが正しい選択肢だといえる」と付け加えた。
GaN SystemsのCEO(最高経営責任者)であるJim Witham氏は、「SiCは高電力/高電圧用途に、GaNは中電力/中電圧用途に対応するものとして分類できる。通常、GaN半導体は50〜900V、SiCデバイスは1000V超のアプリケーションに対応する。また、シリコンも依然として40〜50V未満のパワー設計に対応可能な低電力/低電圧アプリケーション向けで有効な選択肢だといえる」と述べている。
Witham氏は、それぞれの半導体技術が要件に適合する分野について説明しながら、「電力レベルでは、シリコンは20W以下、GaNは20〜100kW、SiCは100k〜300kW以上のアプリケーションにそれぞれ対応する。シリコンとGaN、SiCにはそれぞれスイートスポットがあり、(100kWなど)境界線の領域で競争が存在する」と述べる。
また、同氏は、「SiCの採用が顕著な分野としては、特に電気自動車(EV)用トラクションインバーターをはじめとする自動車分野の他、高エネルギーグリッド、風力/太陽光エネルギーなどの分野が挙げられる。GaNトランジスタに関しては、既にスマートフォンやノートPC向けのモバイル充電器が登場しているが、データセンターの電源用途は開発途中にある。GaN半導体は将来的に、車載用充電器(OBC)やEV用DC-DCコンバーターをはじめ、自動車分野で軌道に乗っていくだろう」と予測する。
カナダ・オタワに拠点を置くGaN半導体ソリューションのサプライヤーであるGaN Systemsは、「CES 2023」(2023年1月5〜8日、米国ネバダ州ラスベガス)において、GaNを採用したCanooの7.2kWのOBCのデモを披露した。Canooは、Walmartや米陸軍に自動車を供給しているEVメーカーだ。またGaN Systemsは、Vitescoが開発したGaNベースのDC-DCコンバーターも披露している。800Vのバッテリーバスアーキテクチャを採用し、バッテリー電圧を、ワイパーやドアロックなどの低電圧の補助回路向けに適した電圧に変換することが可能だという。
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