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RTC設計で重要な温度補償、有効な手段を検討するRTC設計講座【後編】(2/3 ページ)

RTCの特徴および関連する設計上の課題について概説する連載の後編。今回は、RTC設計で重要となる温度補償について、設計者が検討できる選択肢を詳しく説明する。

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測定データポイント数が限られた場合の手段

 測定データポイントの数が限られているとき、設計者はよく、補間法を用いて周波数-温度曲線を再構築する。設計者が次の二次方程式を考慮に入れたとしよう。

 上記において

  • fは周波数
  • tは温度
  • a、b、cは係数

 をそれぞれ表している。

 水晶振動子の周波数-温度曲線は、要求される精度仕様を十分満たす近似値なので、3つの係数を求めるためには、異なる温度ポイントで測定した3つのデータポイントがあればいい。どのような種類の補間法でも、特定のデータポイントでの誤差は最小限に抑えられる。入力パラメータが特定のデータポイントから遠ざかるほど、この計算式の実曲線からの偏差は大きくなる。従って、測定時の温度は間隔を開けるべきである。この例では、最低温度、室温、最高温度の3つの温度ポイントを選ぶのが理にかなっている。

どうやって周波数を補正するか?

 補間式と温度センサーがあれば、RTCは実際の発振器周波数が理想的な32.768kHzからどれほどズレているのかを「正確に」知ることができる。しかし、RTCはどうやって周波数を補正するのか? 前述のように較正レジスタを使用するのも一つの方法だが、水晶振動子内蔵RTCに較正レジスタが実装されていることはまれだ。前述の外部共振器セクションを使用するRTCでは、水晶発振周波数に影響を及ぼしうる要因がいくつかある。

 その一つが、負荷コンデンサーだ。負荷コンデンサーを操作することで、温度補償回路は発振周波数を厳密に上昇または低下できる。可変コンデンサーの一例としては、一つのコンデンサーアレイに、並列コンデンサーのオン/オフを切り替える一連のスイッチを加えたものが挙げられるだろう。

 温度センサーは、RTC内部の他のどのコンポーネントよりも多くの電力を消費する。センサーがオンになる頻度が高くなるほど、RTC全体の平均電流が増える。温度を測定して補償アルゴリズムを実行する頻度は、動作環境の要件に左右される。一部のRTCには、ユーザーが適切な温度測定間隔を設定するためのオプションが用意されている。

 ここでTCXOと水晶振動子を内蔵したRTC「DS3231SN」の例を挙げる。DS3231SNは、−40〜+85℃の動作温度範囲全体で最大3.5 ppmをサポートする精度仕様だが、0〜+40℃ではわずか2ppmだ。図1は、TCXOと代表的な水晶発振器の精度の違いをプロットで表したものである。

<strong>図1: DS3231SNと代表的な水晶発振器の比較。TCXO内蔵RTCの使用により得られる精度ゲインを表している</strong>[クリックで拡大] 出所:Analog Devices
図1: DS3231SNと代表的な水晶発振器の比較。TCXO内蔵RTCの使用により得られる精度ゲインを表している[クリックで拡大] 出所:Analog Devices

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