なんの情報も得られない! 不可解な電源を抱えたX線コントロールユニットの修理【後編】:Wired, Weird(2/3 ページ)
前回に引き続き、基板検査装置に使用されている「X線コントロールユニット」の修理の様子を紹介する。
なんの情報も得られず……
基板の調査中にX線のコントローラーのメーカーから問い合わせに対する回答があった。問い合わせた内容は、「なぜ、DC48V出力電源をDC38.4Vで使っているのか」「電解コンデンサーが過電圧で使用されていることについて」の2点だ。
メーカーの回答は以下の通りだった。
ご依頼の機種におきましては、使用している電子回路部品の生産終了などに伴い継続供給が困難になりましたことから、保守期間を2020年12月末日までといたしまして、後継機種に移行させていただいております。お問合せいただきました件につきましては、大変恐縮ではございますが残念ながら現在サポートいたしかねます。また貴社にて調査をされておられますX線のコントロールユニットは、ご使用中止くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
このように、ユーザーの状況を全く考えない一方的な回答だった。
48V電源の使い方と電解コンデンサーに過電圧がかかっているという安全性に関わる問い合わせに対しては、何の回答もなかった。このままではまずい。無駄とは思ったが問い合わせを再度送った。
ランプの電圧だけでも連絡いただけませんか? このコントロールユニットでは、48V電源電圧を−20%未満の保証されていない38.4Vの電圧で使用し、さらに38.4Vを耐圧35Vの電解コンデンサーへ、耐圧オーバーで供給しており非常に危険な回路、不可解な回路となっています。
と連絡した。
とはいえ、メーカーからのまともな回答は期待できない。今まで調査した結果ではランプ電源が29Vと低く、正常に点灯していないことが動作不良の原因と考えられる。ランプ電圧をDC33Vにすれば良さそうだ。電圧調整部の電源制御IC「TL494」の周辺部品を確認した。ICメーカーのTL494の参考回路を図5に示す。
図5はICメーカーの参考回路図で出力が5V用だ。これをランプ電源の33V用に使用していた。電圧設定の回路定数の抵抗値を右側にメモした。基板のパターンをさらに追った。図6、図7に示す。
図6がランプ電源生成回路の部品面で、図7がハンダ面だ。DC-DCコンバーターには38.4Vが入力され29Vが生成されていた。不可解な点があった。それは電解コンデンサーの入力電源の+端子と生成電源の−端子が接続され、2つの電解コンデンサーは直列接続だった。これは意味が不明だ。電圧生成回路の出力電圧のフィードバック回路の定数を確認した。図5の130kΩ抵抗と1kΩ可変抵抗と4.7kΩ抵抗が直列接続され、130kΩの抵抗の下側の電圧がフィードバックされていた。この抵抗の構成から出力電圧を逆算すると70V前後になる。入力の38.4Vを引くと31.6Vになるのだ。ランプに印加される電圧に近い。生成電圧がランプの電源に使用されている可能性が高い。電源生成回路の確認結果で入力の電解コンデンサーとランプ電源の電解コンデンサーが直列に接続された意味が少し分かった。
図7の赤四角で囲んだボリュームで出力電圧を調整し、右下のトランジスタ経由でOUTコネクターへ電源が供給されていた。ほぼ、不良原因と電源回路は把握できた。TL494の参考回路図と実装された部品を比較し確認して、生成電圧を33Vに調整できた。図8に示す。
図8の左にランプ電源の生成回路があり、入力電源は図8左上側の電解コンデンサーへ接続され、調整された電圧はその下側の赤丸で示した電解コンデンサーに充電されていた。この電源の生成ICは左下のICのTL494で上に4個の可変抵抗がある。右から2番目の可変抵抗VR22が出力電圧を調整するボリュームだった。またボリュームの上にフォトカプラがある。フォトカプラの出力とGND間を黄色の配線で短絡したら、TL494はランプ電源の生成を開始した。生成された電圧は下側のダイオードの両端で測定でき、アノードにテスターの−端子、カソードに+端子を接続して測定した。なお、フォトカプラを詳細に確認するとフォトカプラの出力側にクラックがあった。次ページに図9、図10として示す。
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