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生産中止後も考慮した手厚いサポートに感心 ―― モータードライバーの故障原因調査【前編】Wired, Weird(1/2 ページ)

ダイレクトドライブモータードライバーの不良について調査してほしいという依頼があった。今回から2回にわたってその様子を紹介する。

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 ダイレクトドライブモータードライバーの不良について調査してほしいという依頼があった。不良内容は機器表面にある表示部の赤ランプが点灯し、動作しないということだった。ドライバーの型名が分かったのでWebで調べると機器の表面には表示パネルは付いていなかった。

生産が中止されているのに充実した情報提供

 現品が届く前にドライバーの型名から取扱説明書を探した。その結果、このドライバーのメーカーは、2015年ごろにこのドライバー製品の生産を中止していた上に、モータードライバー事業から撤退して他社へ事業を移管していた。ただ、メーカーのWebサイトには取扱説明書だけでなく、機器を動作させるための支援ソフトも公開されていた。販売した製品を組み込んだ装置のサポートを考慮した情報が公開されるなど理想的な顧客サポートが実施されていた。まずは依頼された機器と説明資料を図1に示す。


図1:調査依頼されたダイレクトドライブモータードライバー(左)と説明資料の一部

 最近の一般的なモータードライバーには機器の前面に表示パネルがあり、エラー情報や動作状況を表示する。だが、このモータードライバーには表示パネルがなく、代わりに25ピンD-subコネクターがあった。このD-subコネクターにPCを接続して機器の動作状況やエラーメッセージを読むことができると思われた。

 取扱説明書には機器の使用方法、各端子の説明やエラーメッセージの詳細な情報などが明記されていた。通信ケーブルのピン配置も説明されていた。通信コネクターにPCを接続し、公開されている支援ソフトで確認すれば、不具合内容が明確になるはずだ。取扱説明書はかゆい所に手が届く、非常に分かりやすい説明だった。通信ケーブルも簡単に作れる。ここまで丁寧に分かりやすく記載された取扱説明書を見るのは初めてだった。これらの資料を確認してこのメーカーの技術力の高さと顧客に対する責任感の強さを実感できた。

どうやら一度修理を諦めた様子

 事前調査が終わったころに依頼されたモータードライバーの現物が届いた。ドライバーの電源基板の電解コンデンサーは事前に交換したということらしく、どうやら私の手元に届く前に別の会社へ修理を依頼したもののモータードライバーは動作しなかったようだ。エラーメッセージを確認しないで作業を進めてしまったのだろう。もしそうであれば不具合の原因が消えてしまい修理不能になる可能性もある。まずは、機器を開けて電源基板を確認することにした。図2に示す。


図2:内部の基板の様子[クリックで拡大]

 図2の左側は通常の配置で下に電源基板の整流部、上にはCPU基板のIO部がある。図2の右側はCPU基板のCPU部と電源基板の制御部が見える。電源構成は一般的なモータードライバーと同じで制御回路用の5V、センサー用の18V、IGBT駆動用の14V、アナログ回路用の15Vの電源が生成されていた。電源部の詳細な写真(図3)を次ページに示す。

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