ダイナミック回路とスタティック回路の内部構成と仕組み:Q&Aで学ぶマイコン講座(89)(1/4 ページ)
マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、初心者の方からよく質問される「ダイナミック回路とスタティック回路」についてです。
素朴な疑問から技術トラブルなどマイコンユーザーのあらゆる悩みに対し、マイコンメーカーのエンジニアが回答していく連載「Q&Aで学ぶマイコン講座」。
今回は、初心者から多く寄せられる質問です。
マイコン内部の回路にあるダイナミック回路とスタティック回路とは何でしょうか? この2つは、どのように異なるのでしょうか? ダイナミック回路とスタティック回路の内部構成と仕組みについて教えてください。
集積回路内の論理ゲートの出力部において、クロック周期の前半だけドライブ(駆動)して、寄生容量または専用に設けたコンデンサーを充電し、後半はそのコンデンサーの電荷を維持または放電することで論理を伝搬する方式が、ダイナミック回路です。一方、クロックの全周期の間、常に入力値に従った値で出力部をドライブしながら論理を伝搬する方式が、スタティック回路です。
図1にインバーターの例を示します。(a)がダイナミック回路、(b)がスタティック回路です。
ダイナミック回路では、クロックがロー期間に充電し、ハイ期間にデータを確定させます。まず、クロックのロー期間にPチャネルMOSFET(P-channel Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:以下、PMOS)をONしてコンデンサーを充電します。IN(入力値)が0の場合、クロックのハイ期間では、クロック側とIN側のNチャネルMOSFET(以下NMOS)がONし、コンデンサーの電荷を放電して、OUT(出力値)は0になります。INが0の場合は、クロックのロー期間にPMOSがONしてコンデンサーを充電するところまでは同じですが、クロックのハイ期間には、IN側のNMOSがONしないため、コンデンサーの電荷は維持されてOUTは1を維持します。次段の論理ゲートは、クロックがハイの期間にOUTをラッチします。
スタティック回路の場合、クロックが不要です。INが1であればNMOSがONし、PMOSはOFFするのでOUTは0になります。INが0であればNMOSがOFFし、PMOSがONするので、OUTは1になります。この場合、必ずPMOSかNMOSがINの値に従ってOUTをドライブします。
ただし、ダイナミック回路とスタティック回路は、マイコン内部の回路方式であるため、どちらの回路が使われているかについて、ユーザーが気にする必要はありません。使用上の注意もなく、信頼性の考慮も不要です。
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