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ステップアップ形DC/DCコンバーターの設計(2)使用する部品の定格たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(9)(3/4 ページ)

今回はステップアップコンバーターに使用する部品の定格について説明、検討していきます。

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ダイオード(D1

VR:カソード(K)〜アノード(A)間に印加できる最大の逆方向の電圧です。
 ショットキーダイオードなどではVRが温度によって変動する製品もあるのでカタログを確認してください。

 FET(M1)がターンオンするとダイオードD1のカソードは出力電圧Voutに、他方のアノードは0Vに固定され、D1のA−K間にはVoutの電圧が印加されます。ですがこの値はFETの場合と同じく理論値です。実際には各素子やパターンの寄生成分によってスパイク(リンギング)電圧が20%程度上乗された電圧がダイオードのA-K間に印加されます。ディレーティングを80%とすればVR定格として1.2/0.8=1.5倍の値を考えればよいでしょう。

6式

Trr:ダイオードの電流が反転した時の逆方向回復(リカバリー)時間です。ダイオードのタイプはVRが許せばショットキー形(SBD)とし、そうでない場合は高速形(FRD)とします。
 trrの選択の考え方はステップダウン形と同じで、trrが同じならばリカバリー電流波形のピーク値が低い方を選んでください。


図4:ダイオード電流波形の定義

IF:順方向の平均電流です。
 (AVE)表示の場合は断続波での平均電流です。当然、この値はDC/DCコンバーターの出力電流Ioよりも大きくなければなりません。
 ダイオードの損失は(VF×IF)が主なので温度上昇の観点からIF定格の目安としてコンバーター連続定格電流Ioの4倍以上のIF定格品を選定します。チップが2個組み込まれたツインダイオードの場合は合算値で判定します。
この他の損失にはスイッチング損失、漏れ電流損失などもありますが損失の割合は高くありません。


図5:IF〜損失曲線例

 以下の計算では図1におけるダイオードD1の通電率をδ(D1)とします。したがってδ(D1)=1−δです。
 温度の予測で重要になってくるのがダイオードの損失PFです。しかし損失の予測は難しく、カタログに記載されている図5に示すダイオードの通電率δ(D1)をパラメーターにした電流〜損失曲線から読み取ります。
 実際のδ(D1)に合致する曲線がない場合は比例関係にあるとして近傍の曲線から読み取ります。

 例えばIo=5Aで入力電圧VCCを13.5V、出力電圧Voutを15VとすればFET(M1)の通電率δは0.1、δ(D1)は0.9となります。図5からダイオードD1の損失PFは約1.8Wになります(図5の曲線ではδ=0.9の線はありませんので目測で読み取ります)。

 この条件のままVCCを7.5Vに低下させるとFET(M1)の通電率δ=0.5に広がり、δ(D1)も0.5となります。上記と同様にPFをグラフから読み取ると、IAVE=5A,δ=0.5からPFは約2Wになります。
 このように低入力時ほどD1の損失は増加しますので部品の温度評価もこの条件で行います。

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