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「CES 2025」から見る車載半導体トレンド置き去り検知や機械学習に注目(1/2 ページ)

自動車メーカーの設計アプローチが従来のドメインアーキテクチャからゾーンアーキテクチャへと移行する中、センサー機能の最適化や、マルチモーダル入力データと機械学習(ML)とを融合させた状況認識が推進されている。本稿では、「CES 2025」で展示された車載向けのソリューションを紹介する。

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 自動車メーカーの設計アプローチは、従来のドメインアーキテクチャからゾーンアーキテクチャへと移行してきている。こうした傾向に伴い、センサー機能の最適化や、マルチモーダル入力データと機械学習(ML)とを融合させた状況認識が推進されている。

 センサーはもはや、1つの機能だけを提供するものではない。運転者監視システムからスマートドアアクセスに至るまで、一連の車載システムで活用できる。センサーの多機能化によってカメラやセンサーの数が最小限に抑えられ、電力消費量も最適化される。

 本稿では、米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2025」(2025年1月7〜10日)で展示された車載向けのソリューションを紹介する。

自動車照明もインテリジェントに

 下図は、Microchip Technologyのインテリジェントスマート組み込みLED(ISELED)とISELEDライト/センサーネットワーク(ILaS)、照明ソリューション「Macroblock」だ。ISELEDプロトコルは、個々のLEDの色/輝度を制御するためにLEDごとに外部ICが1個必要になるという問題を解決するために開発された。

 Microchipは、各LEDにインテリジェントASICを統合し、シンプルな16ビットMCUでシステム全体を制御できるようにした。このソリューションによって、例えば自動車の状態を説明するテキストをディスプレイベースのマトリクス照明で表示するといったユースケースが実現する。

Microchip Technologyが展示した照明ソリューション
Microchip Technologyが展示した照明ソリューション[クリックで拡大]

 Analog Devices(以下、ADI)の10BASE-T1S用技術「E2B」(Ethernet to the Edge Bus)は、車体制御や自動車照明接続ソリューションに使われている。このソリューションはLED制御とは直接関係ないが、10BASE-T1S車載バスを活用する自動車メーカーが自動車照明システムをアップデートする際に使用できる。

高精度化する置き去り検知システム

 幼児置き去り検知や同乗者監視システムは広く普及しているテーマで、CES 2025でも多くのメーカーが測距技術や60GHzレーダーチップとともに超広帯域(UWB)無線を用いた検知機能を披露していた。これには、自動車メーカーが厳格な安全規制に準拠するべく絶え間ないプレッシャーを受けているという背景がある。

 例えば、欧州で自動車の安全性評価を行うEuro NCAPのAdvancedプログラムでは、自動車メーカーは幼児置き去り検知向けの直接検知システムに対してのみ報奨金を受け取れる。UWBセンシングの標準的なセットアップでは、UWBアンカーを車外に4個、車内に2個配置して、UWB搭載スマートフォンを検知する。下図は、NXP Semiconductors(以下、NXP)のブースで披露された車載用UWBのデモだ。画像に示されているように、UWBレーダーはUWBアンカーからスマートフォンまでの距離を特定し、ToF(Time of Flight)方式でUWBの測距機能を利用して、車両の外側から鍵を開けることができる。これと同じ原理を鉄道の駅に適用すると、事前に乗車券を購入した乗客がタッチレスで改札を通り抜けられるようになる。

NXP Semiconductorsが展示した車載用UWBのデモ
NXP Semiconductorsが展示した車載用UWBのデモ[クリックで拡大]

 QorvoもUWBソリューションを披露した。デモ用のおもちゃの自動車(下図)には、UWBアンカーが1つ搭載されている。また、UWB/60GHzレーダーのもう1つの先進運転支援システム(ADAS)アプリケーションとして、呼吸/心拍検知も展示した。

Qorvoが展示したUWBソリューション
Qorvoが展示したUWBソリューション[クリックで拡大]

 NXPのエンジニアは呼吸/心拍検知について「搭乗者からの信号反射を測定し、例えば、胸部が膨張/収縮する頻度を検出することで呼吸を測定する。これによって搭乗者を直接検知し、幼児置き去り検知や同乗者監視、侵入者アラートなどのさまざまな機能を提供できる」と述べている。

 ワイヤレスチップの数に関してははっきりとした答えが存在しないようだが「センサーをさらにインテリジェント化して、部品数を最小限に抑える」という要望が多いのは確かだ。例えば、1つのレーダーチップで座席の重量センサー5個を代替するというようなことだ。

 下図は、Texas Instrumentsの幼児置き去り検知と同乗者監視システムおよびドライバー監視システムで、同社の60GHzのレーダーチップとカメラを組み合わせたものだ。短波長の60GHzレーダーは非常に高い距離分解能を提供するため、このシステムは人物検知の精度を高め、誤検出を低減できる可能性がある。

Texas Instrumentsが展示した人物検知ソリューション
Texas Instrumentsが展示した人物検知ソリューション[クリックで拡大]

 60GHzレーダーを利用する最も明白なメリットは、6個のUWBモジュールを1個のモジュールで置き換えられるという点だ。ただしこれは、UWB技術が使用されなくなるという意味ではない。UWBの測距性能は、精度の高いスマートドアアクセスを実現できるが、特定の周波数における大気吸収について考慮すると、60GHz技術では現実的ではない可能性がある。

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